環境にやさしい米づくり

農薬・化学肥料を減らす

 美味しい米の生産とともに、消費者に安全で安心な米を提供することは、生産地としての責務といえましょう。安全・安心はもはや品質の一部になっています。消費者は農薬の使われ方などに大きな関心をもっています。

 かつて、米づくりは雑草と病害虫との戦いであった、といって過言ではありませんでした。戦いに負けた田んぼには、雑草が一面にはびこり、いもち病は穂を褐色に枯らしました。

いままで手をこまねいていた雑草と病害虫の駆除に、絶大な効果を表したのが次々と開発された農薬でした。とりわけ、除草剤の開発は、農家を炎天下での草取り作業から解放しました。まさに、農家にとっては福音でした。

化学肥料の多用は収量を飛躍的に伸ばしました。のみならず、農薬や化学肥料の開発は経営規模の拡大をも可能にしました。その一方で、田んぼからは小さな生き物が次第に姿を消してゆきました。

ところが今、刈り取り前の田んぼでは、イナゴがうるさいほど飛び跳ねています。環境にやさしい米づくりを、安全・安心な米を、との声は消費者のみならず、生産者からも高まってきたからです。

農家の人たちは、農水省の基準に従い、毎日の作業をしながら生育を記録し、安全・安心なお米を作るために、生産から出荷まで責任をもって管理しています。 しっかり自然を意識した米作りが健康な米作りへとつながり、私たちの生活をより豊かなものにしてくれるのです。

特別栽培米

農薬や化学肥料を削減して作った米"特別栽培米"が増えています。山形県の水稲作付面積は67600ヘクタール(平成20年)のうち、特別栽培米は10779ヘクタールで、田んぼの16%を占めるまでになっています。19年は13%ですから、特別栽培米は年々増えていると言えるでしょう。

 特別栽培米とは、化学肥料の使用量が当地比の5割以上、農薬の使用量が成分回数で5割以上に減らして作られたものです(当地比:生産者の地域での慣行栽培に対する比率)。農薬や化学肥料を削減した米づくりが当たり前になってきたのです。

アイガモ君の草退治

有機栽培米

米に限らず、有機農産物とは、一言でいえば、有機栽培によって生産された農産物のことです。しかし、有機米の表示には「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」(JAS法)に基づかなければなりません。

DSC_2984.jpg有機農産物は、第三者の認定機関(登録認定機関)が圃場ごとに有機農産物生産者を認定し、その生産者の生産物に限って「特定JAS有機マーク」を貼付することができます。

有機米の生産は、化学合成された肥料や農薬の使用を避けることを基本とします。そして、土の性質に由来する田んぼの生産力を発揮させるとともに、環境への負荷を低減した栽培管理を採用した田んぼで生産されることです。

 このため、厳しいルールを守らなくてはなりません。たとえば有機米づくりの田んぼの要件として、「農薬が飛来(ドリフト)しないよう、一般栽培の田んぼや畑と一定距離以上を保つこと」、「かんがい水に化学肥料や農薬の混入を防止するための措置が講じられていること」、「植え付け前2年以上にわたって、化学肥料や農薬が使用されていないこと」が必要です。

使用できる肥料は、当該田んぼからの藁、モミガラ、糠などの残さ、家畜に由来するたい肥などの施用に限られます。

雑草や病害虫対策では、耕種的(田畑転換、深水管理による雑草防除など)、生物的(アイガモ、コイによる雑草防除、畦畔・農道の草刈によるカメムシ防除など)、物理的(温湯による種子消毒、紙マルチや除草機による雑草防除など)方法を適切に組み合わせて行うことが原則とされています。

 しかし、これらの方法によっても、農地の生産力の維持・増強と雑草・病害虫の防除ができない場合、使用が許容される土壌改良資材と農薬(除虫菊剤など)が詳しく定められています。

「アイガモ」が雑草退治

 除草剤を使用しない田んぼの雑草退治に、猫の手ならぬ、「アイガモ」の助けを借りる農家もいます。田んぼにアイガモを放すと、雑草と虫を食べますが稲は食べない習性を利用したものです。

アイガモの雑草退治(6月10日)

 30アールの田んぼに30羽ほど放飼します。アイガモが6月から8月上旬、穂が出るころまで、田んぼの中を泳ぎまわることで、土がかき回されて雑草が浮き上がる、水が濁って、水底面への日光が遮られて雑草の生育が抑制される、などの効果があります。糞は、そのまま肥料となります。