山形の米づくりの歩み 稲品種と栽培の系譜より(10)

Ⅸ うまい米のお墨付き食味ランキング
 毎年2月最終日、全国の主要米産地の生産者や流通関係者が注目し、その結果に一喜一憂するのが日本穀物検定協会から公表される米食味ランキング。食味ランキングは同協会が食味試験に基づいて行う良食味米の格付けである。複数産地のコシヒカリのブレンド米を基準として、「食味評価のエキスパート」と呼ばれる専門職員が官能試験で対象品種を比較評価する。炊飯米の外観、香り、味、硬さ、総合の6項目で基準米よりとくに良好と評価されたたものが最高位の「特A」にランクされる。「特A 」は良食味米のトップクラスの"お墨付き"でもある。
 食味ランキングは日本穀物検定協会が昭和46年産米から良質米づくりの推進と米の消費拡大に役立てるため、道府県の代表的な産地品種の食味評価を行い、その結果を米の食味ランキングとして公表している。初めて最高位の格付け「特A」ランクが設定されたのが平成元年産からだ。この年の「特A」の産地品種数はわずか13、そのうち11が新潟県産などのコシヒカリであった。コシヒカリ独壇場の中でも、新潟魚沼産は価格面でも別格であった。その後、魚沼コシは28年連続特Aを獲得する。  もちろん、他産地においてもポスト「コシヒカリ」を目指し、良食味米品種の開発への取り組みが急ピッチで進められる。秋田県で「あきたこまち」、宮城県で「ひとめぼれ」、山形県で「はえぬき」が誕生、特Aを獲得する。さらには、やっかいどう米とまで揶揄されていた北海道で、「ななつぼし」、「ゆめぴりか」が開発される。これによって、イネの品種は米の品種になった。米を食べる消費者が「品種」というものに目覚める結果を生んだ。
 魚沼産コシヒカリの牙城が崩れたのが平成29年産、猛暑による品質低下が加わりAランクに降格、マスコミは一斉に「魚沼コシ特A陥落」と報じる。危機感をもった新潟県は産地一丸となって返り咲きを目指し、翌年見事特Aに輝く。
 特Aをめぐる同様のドラマは山形県産「はえぬき」でも展開される。「はえぬき」は平成6年産から28年産まで特Aを魚沼産コシヒカリと共に22年連続で獲得していたが、29年産はAに格下げされたからである。「はえぬき」は山形県の米生産量の6割を占め、食味の良さと収量も多く作りやすさで県産米をリードしてきただけに格下げの衝撃は大きかった。しかしこの衝撃は、県産米にカツを入れ、「つや姫」、「雪若丸」の開発へとつながり、全国の良食味米生産をリードするまでになった。「はえぬき」は特A奪還をめざし令和2年産でリベンジを果たすものの、以後は残念ながらAランクに低迷している。
 令和7年産の食味ランキングの結果を見てみよう。全国産地銘柄品種数は940、うち、食味ランキングにエントリ-したのが144、その中で特Aが43、特Aの割合は全国の産地銘柄品種数の4.6%である。品種別の特A数は首位コシヒカリが6で全国のトップを占めるものの、主産地新潟県は魚沼産のみであり、かつて全国を席巻した新潟コシの勢いはない。次いで、暖地の東海・西日本を産地とする「にこまる」が6,「きぬむすめ」が5と続く。両品種は、高温耐性品種として躍進中である。
 「つや姫」は3産地、山形県村山、置賜産が特Aを16年連続、宮城県産も6年産に続いて、通算12回目を獲得した。本県期待の「雪若丸」は山形県庄内・置賜で特A、デビュ-から8年連続の最高評価を得た。一方、主力品種「はえぬき」は前述したように令和3年以降苦戦していたが、最上「はえぬき」が5年ぶりに見事特A復活を果たした。通算24回目の特Aである。
食味ランキング表(令7まで).jpg食味ランキング品種数(令7).jpg
 

2026年3月 9日 10:53