出穂後の高気温と酒米品質(7)
登熟期が高温年であった令和6年産山田錦、愛山
のサンプル調査の結果、玄米タンパク質含有率と心白未熟粒(白濁粒)歩合との間には負の相関が認められた(4報)。そこで、上表に示した酒造好適米品種の中から高タンパク質含有率と低タンパク質含有率のサンプルを抽出し、タンパク質含有率別に白濁粒歩合と玄米形質を調査した。その結果、
白濁粒歩合:出羽の里以外はいずれの品種もタンパク質含有率が低いサンプルは明らかに白濁粒歩合は高かった。山田錦、愛山ともに、整粒のタンパク質含有率が6.5%と低いサンプルは心白が大きく白濁しているのに対し、8.5%と高いのは心白が粒の中央に入っている(右写真)。
玄米形質:サンプルから整粒のみを選別し、その玄米特性をタンパク質含有率別に比較すると、玄米タンパク質含有率が低い整粒はいずれの品種とも共通して粒厚はやや厚い傾向を示した。
登熟期間が高温に晒されると、本データで示したように品種特性、産地に関わらず白濁粒が多発し、玄米タンパク質含有率が低いと発生が助長されることは、山田錦は登熟初期の高温の下では、タンパク質含有率と背白粒歩合は負の相関を示した、との報告と一致する(池上)。
酒造好適米品種の高品質栽培においては、窒素施肥量を少なめにし、タンパク質含有率を低くする施肥法が奨励されている。しかし、近年のように出穂後の高温が常態化、という気象条件の下では、白濁粒による品質低下を防ぐための穂肥の2回施用などでタンパク質含有率を高める肥培法も有効であることを本事例は示唆している。ただし、この方法では玄米タンパク質含有率は確実に高まることから、醸造適正の面をも含めた検討が必要である。
2025年4月 7日 11:47