良食味品種はズングリタイプへ

特A品種の稈長.jpg 良食味品種の稈長.png
令和6年産の食味ランキングの特Aにランクされた品種は上表に示したように19品種です。これら品種のうち、近年育成された良食味品種には稲の草型に共通の特徴がみられます。 それは長年特Aをキープしているコシヒカリ、あきたこまち、ひとめぼれとは異なり、つや姫、雪若丸(山形県)のように丈が70cmそこそこの短いズングリタイプが目立つことです。
 かつての良食味米品種はコシヒカリにみられるように長稈でスラリタイプです。ササニシキもしかり。コシヒカリの父系品種陸羽132号は100㎝、さらにその父亀の尾は110cmもの長稈でした。長稈の草型は、少肥条件には適していますが、多肥条件では丈が伸びすぎて倒伏しやすい欠点があります。このため、育成される品種は次第に短稈化します。1950~60年代、九州地方の収量水準を飛躍的に高めたホウヨク、シラヌイ、レイホウ、東北地方ではレイメイ、アキヒカリなどの品種は長い穂を維持しつつ稈長は70cmと短く、葉が直立する良好な受光態勢を持つ草型で、多収には理想的でした。これらの品種は食味は二の次、質より量を求めた時代の申し子でした。
 短稈品種の米は"マズイ"、その先入観を打ち破ったのが"はえぬき"(山形県 平3)でしょう。"はえぬき"の丈は70cmそこそこ、あまりの短さに、ササニシキ、コシヒカリを見慣れた農家はびっくり仰天、「こんな稲にコメはなるの、ほんとうにおいしいの」。「はえぬき」は登場初年目から特Aにランクされ、以後、魚沼産コシヒカリをライバルに22年間特Aに輝きます。
 食味ランキング特Aに短稈多収タイプの品種がランクされたのは「はえぬき」が初めてでしょう。「はえぬき」は母系にレイメイの流れをくむ庄内23号、父系にコシヒカリの流れをくむ「あきたこまち」を交配して育成されました。短稈で良食味の特性は、祖父母品種のいいとこどりをした品種なのです。
 「はえぬき」が橋頭保を築き、「つや姫」(平21)、「雪若丸」(平27)が誕生、いずれも丈が短くズングリタイプながら特Aにランクされる良食味品種です。高温耐性の特性をも持っています。短稈品種は倒伏にも強いことから、経営規模の拡大に適するなど、多くのメリットもあります。良食味米短稈品種の誕生はは地道な品種改良の成果と言えるでしょう。
 

2025年3月 7日 09:31