出穂後の高気温と酒米品質(5)
<玄米タンパク含有量と心白未熟粒との関係2>
右図は令5年産「出羽燦々」、「雪女神」の県内産地を込みにした玄米タンパク含有量と心白未熟粒歩合との関係である。両品種とも、玄米タンパク質含有量が高いサンプルは心白未熟粒歩合が低いという負の関係がみられる。
令5年の県内は猛暑に見舞われた年であり、出穂後20日間の平均気温は28℃(平年23.5℃)で経過している。本図は令6年4月26日にも本ブログで紹介し、その中で、玄米タンパク質含有量が高いサンプルは、穂肥量が多い、施用時期が遅れたなどの要因で高まったのでないか。その結果として、出穂以降も茎葉の窒素含有率が高いため、高温下にあっても白濁粒の発生が軽減されたのでないか、と推察をしている。
なお、ここでの心白未熟粒歩合とは、サタケの「穀粒判別器(醸造米対応)」が白濁化した粒を「心白未熟粒」の判定する数値である。サンプルは、ふるい目幅2.1mmで選別していることから、心白未熟粒の玄米の大きさ(長さ、
幅、厚さ)は整粒とほとんど変わりない。
さて、弊社では兵庫県三木市を中心に生産された山田錦、愛山を取り扱っていることから、品質についても調査を行っている。令和6年産の結果を示そう。
令6年の兵庫県産米は出穂後高温下で登熟したためか白濁粒が多いのが目立った。出穂後20日間の平均気温は28℃(平年23℃ 三木市アメダス)であった。2.05mm網で選別したサンプル(山田錦140、愛山80点)の玄米タンパク質含有量と心白未熟粒歩合との関係をみると、令5年の山形県産と同様に両品種とも負の相関を示した。
このように、品種特性、産地・栽培法・昨季などが大きく異なっていても、出穂後20日間の登熟初期間が高温(26℃以上?)条件下では、玄米タンパク質含有量と心白未熟粒歩合には負の関係があることが認められた。池上は、山田錦において出穂後11~20日間目の日平均気温26.5~28.0℃の範囲で、背白米率と玄米タンパク質含有量が5%水準で有意な負の相関を示し、玄米タンパク質含有量が高い場合は、背白米の発生が低くなることが認められたとしている。
以上の結果から、酒米産地の現場から得られた両図は、心白未熟粒などの白濁粒の発生抑制には登熟期間の高温の回避とともに、穂肥の施用などの肥培管理による方法が有効なことを示唆している。
2025年3月24日 12:17