スマ-ト農業時代まで引き継がれている技術
ようやく春到来、塩水選をする平吹正直さん一家
2月と3月が逆転したような天気が続いていましたが、4月1日は春らしい陽気です。
さて、今日はこの指とまれの平吹正直さん恒例の"塩水選"の日です。アスク社員も駆けつけ、この日塩水選したのは、酒造好適米品種「羽州誉」、「龍の落とし子」、「改良信交」の種子生産用(原種)と「羽州誉」の栽培用種子です。
塩水選は充実した種子を選ぶ方法で、米づくり技術のうち、最も基本的で、最も簡易な作業と言えるでしょう。水10リットルに塩2.1kgを入れると比重1.13の塩水になります。この塩水に種子を入れると、充実不良なタネもみは浮き、十分に稔ったもみは沈みます。
塩水選法は140年も前の明治15年(1882)、福岡県農学校兼勧業試験場の横井時敬(ときよし)が考案したもので、わが国農業技術の第1号とも言われています。その後、塩水選法は全国に広く普及、山形県東田川郡では明治26年(1893)「米作改良法」を設け、その筆頭に塩水選法を掲げています。
蛇足ながら、「用利学究」の扁額は、横井時敬が明治23~27年にかけて稲作改良の講和会に来県した折に揮毫したもので、山形県農業総合センタ-に保存されています。紹介まで。
かつて、塩水選は春先の農村の原風景でしたが、現在はほとんど目にすることはありません。近年の種子調製の高度機械化によって塩水選を必要としないほどに精選が向上したからです。
スマ-ト農業が喧伝されている今、塩水でタネを選ぶ、というのは稚拙に思われるかもしれません。しかし、充実した種子は健苗を育て、暑さに負けない高品質の酒米育む、と言っても過言ではないでしょう。「稲のことは稲に聞け」、蓋し、横井時敬の名言です。
2024年4月 1日 13:58