出穂後の高気温と酒米品質 (2)
<心白未熟粒歩合との関係>
酒造好適米品種の特徴は大粒で心白と呼
ばれる白色部を粒の中央に持つことである。
心白部のデンプンは丸味を帯び単粒や複粒
デンプンが混在し、デンプン粒の発達や緻
密度が劣るため光の透過性が低く、白色に
見える。心白粒は吸水や麹菌の「はぜ込み」
(米粒への菌糸の侵入)に優れ、蒸米が
「外硬内軟」と呼ばれる二重構造になり、
酒造りに適した原料になりやすい(池上)。
従来、心白は発現が多く、大きさも大き
いほうが良いとされてきたが、吟醸酒など
の精米歩合の高い特定名称酒の製造では、
精米時に砕米が少なく、高精米が可能な小
さい心白や横断面の心白形状が線状のもの
が求められている。
県内産酒造好適米品種の心白は、「出羽
燦々」の心白率が20数%で、うち線状タイ
プが30%ほど占め、「雪女神」の心白率は
15%で、小さい点状タイプが40%ほど占め
る。「出羽の里」の心白率は高く50%でう
ち眼状タイプが50%を占めるなど、品種に
よって心白特性が異なる。
令5年産米の心白形状を見ると、いずれの酒米品種とも心白部分が大きく白濁化を呈した。点状で小さい心白が特性である雪女神も、心白が腹側に流れる粒が目立った。とくに、心白が大きい「出羽の里」はほとんどの粒が白濁化していた。サタケの穀粒判別器(醸造米対応)は、白濁化した粒を「心白未熟粒」と判定することから、整粒歩合はいちじるしく低い値となった。なお、調査サンプルの玄米は2.0~2.1mmの篩目で選抜した完全米であり、白濁粒と呼ぶのが適切と考えられるが、ここでは穀粒判別器の用語を用いている。
上図に示したように、三品種とも8月中旬の平均気温が26℃以上になると「心白未熟粒歩合」が急激に高まることがわかる。一般米においても登熟期間中の平均気温が26~27℃を超えると心白米、背白米、腹白米、乳白米が急激に発生し外観品質が低下することが知られている。登熟期間の高温によって白濁化するメカニズムについて、森田は次のように述べている。
①シンク側(胚乳)のデンプン合成能力の低下
②糖の輸送能力の低下
③ソース側(茎葉)での光合成産物能力の低下
④稲体の窒素不足
酒米の白濁化は高度精米の過程で砕けやすい、また、白米を水に浸漬した際に割れやすい(水浸裂傷粒)。酒米の重要形質である心白発生については不明な点が多くさらなる解明が必要である(池上)。
2024年4月22日 14:14