良質酒米生産に向けた栽培技術のポイント(6)

YS23.jpg
 S23:酒造好適米品種は、大吟醸酒などの原料米であり、その多くは50%以下まで削られる。このため、酒米づくりでもっとも注意を払わなければならないのが胴割れである。千粒重が大きく、心白発現が鮮明で、タンパク質含有率が低いなどの酒米適性が優れていたとしても、胴割れ粒多発は蔵元からはもっとも嫌われる。胴割れ粒は外観上からは確認できないものであっても、グレ-ンスコ-プでは明瞭に確認できる。醸造用穀粒判別器(サタケ、静岡)で調査した胴割れ粒歩合の値より、グレ-ンスコ-プでの調査した値は明らかに高い(写真)。
 胴割れ粒発生の原因の一つに、出穂後10日間の最高気温が30℃以上連続して経過すること、という研究データがある(上図)。これは、登熟初期の気温が胚乳組織の大きさ、細胞総数、米粒の長さ、幅の大きさなど、玄米内部・形態に関係する形質に影響し、これが胴割れ粒発生と関係する。このため、出穂後10日間以上にもわたって最高気温が30℃以上続いたときには、胴割れ粒発生の黄色信号である。
YS24.jpg S24:胴割れ粒は刈り遅れ、不適切な乾燥法で発生するが、金山酒米研究会と新庄のゆびきりげんまんの事例で分かったことは、登熟後期の9月上旬の平均気温が胴割れ粒歩合と関係することである。すなわち、気温が低い年は総じて胴割れ粒歩合が高かった。その要因は判然としないが、①9月上旬の気温が低いことで、二次枝梗着生もみの登熟が進まないのに、一次枝梗着生もみや穂の上部着生もみは登熟が進み一穂内に水分ムラ、登熟ムラを生じること、②青もみが多く刈り取りを遅らせていること、などにあるのでないかと推察した。

2024年3月19日 09:45