良質酒米生産に向けた栽培技術のポイント(4)


YS16.jpg S16:原料米のタンパク質含有率が高いと、酒のアミノ酸度が高まり、雑味が多くなると言われ、含有率は低い方がよい。出羽燦々のタンパク質含有量の年次変動をゆびきりげんまん(上図黒線)、金山酒米研究会(黒点線)、指村会長(青線)についてみると、いずれも、調査当初年は高めであったが、平成30年産からは低く推移している。とくに、ゆびきりげんまん大沼さんの美山錦は6%台と低く推移している。その要因の一つが、タンパクを測定し、その数値を生産者に提示することで、低タンパク酒米の生産への意識が高まってきたためと考えられる。タンパク測定の強力な武器が、弊社が導入しているFOSS社製の近赤外分光分析計である。本器は精度が高く、短時間で多数のサンプルのタンパク測定が可能である。
YS17.jpg S17:タンパク質含有率は、千粒重や心白率とは異なり、気温の影響よりは土壌特性や施肥法などの栽培法の影響が大きい。このため、タンパク質含有量を測定することで、栽培法の改善に役立てることができる。生産者と蔵元にとって、一石二鳥である。金山酒米研究会で調査を始めた当初に、土壌型別にタンパク質含有率をみると、細粒強グライ土が7%台であるのに対し、黒ボク土は8%台と高く、土壌型で差がみられた。しかし、タンパクを測定することで、生産者が低タンパク酒米を作る意識の高まりで、土壌型間の差はみられなくなった。

YS18.jpg S18:タンパク質含有率は登熟期間の気温の影響は登熟期間の気温の影響は小さいが、昨年のような猛暑では高まる。ゆびきりげんまんではいずれの品種でも02%ほど高まった。
YS19.jpg S19:タンパク質含有率は窒素肥料の施用量、なかでも穂肥施用量、穂肥施用時期によって影響され、その量が多い、時期が出穂期に近いほど高まる。その傾向は出羽の里や雪女神より出羽燦々で強く表れる。
YS20.jpg S20: 玄米タンパク質含有率はもみ数が多いと高まる。これは窒素肥料を多く吸収してもみ数が増えるとともに小粒化し、玄米タンパク質含有率が高まるため。

2024年3月12日 14:59