良質酒米生産に向けた栽培技術のポイント(3)

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YS13.jpg S12,S13:酒米の特徴が心白粒である。心白が真ん中に鮮明に入った大粒の玄米をみると、これぞ酒米と思う。心白粒の発現は同一品種であっても、生産年や生産者間での変動が大きい。酒米の品質を測定する機器間でもその数値に差がある。
 これまで、酒米適性としての心白粒は、その発現率が高く、大きさも大きいのが良好とされてきた。反面、近年の醸造技術の進歩などから心白をさほど重視しない傾向にあるという。大吟醸酒などの精米歩合50%以下まで削る特定名称酒の製造では、精米時に砕米が少なく、高度精米が可能な小さい心白や、心白の横断面が線状のものが求められている。
 心白粒は中心部のデンプン相互の接合が緩いため、間隙が大きい。このため、光の乱反射によって白色不透明に見える。心白の入り方、大きさは品種で特徴がある。玄米を横方向に切ると、心白の形状は5つのタイプに分類される(高橋)。山田錦は線状型といって、横一文字の線が走って見え、このタイプは蔵元からは喜ばれる。出羽の里は眼状型といって、眼状の形に見える。雪女神は点状型が多い。心白は大きすぎると高度精米で砕けやすい。
 心白発現の特徴は、品種特性であるが、発現率には同一栽培であっても年次変動がみられ、アスク試験田の出羽燦々では、25%~60%までの大きな差がみられている。
YS14.jpg S14:出穂後の気温と心白発現率との関係をみると、心白粒の発生は出穂後の気温に影響され、出穂後20日間の平均気温が高いと心白発現率は高まる。しかし、気温が高い年の心白粒は心白が腹側に流れる腹白状が多く、乳白粒のように見える。サタケの穀粒判別器(サタケ醸造用)は心白未熟粒と判定する。

YS15.jpg S15:8月猛暑に見舞われた令5年の玄米サンプルは心白粒が粒全体に広がり、サタケの穀粒判別器で測定すると、シンパク未熟粒と判別され、整粒歩合は大きく低下した。
 もみ数との関係では、もみ数が多いと心白率は低下する。これはもみ数が多いと、千粒重が小さくなり、心白発生が抑制されるためでないか。心白の入り方は複雑であり、変動も大きく、発現には不明な点が多い。


変動をもたらす要因が登熟期間の気温であろう。出穂後の気温と心白発現率

2024年3月12日 13:14