良質酒米生産に向けた栽培技術のポイント(10)
S32:県酒米コンテスト入賞者の酒米づくりの特徴の一つがケイ酸質資材の施用である。穂肥施用の同時期にケイ酸資材の散布、流し込みを行っている。その効果をみると、千粒重は0.2gほど高まり、タンパク質含有量は0.2%低下した(総農研)。一般に、ケイ酸吸収量は幼穂形成期以降に著しく増加する。この要因は、水稲側からは根群が作土層に十分に伸長していない生育初期の場合、ケイ酸の積極的吸収が難しいこと、水稲のケイ酸要求度がまだ高まっていないこと、土壌側からは、土壌還元の発達に伴い溶出が促進されることから、生育後半に土壌還元が進むことにより、ケイ酸供給量が高まることによる。このため、幼穂形成期以降のケイ酸供給をケイ酸質肥料の施用が効果的である。また、施用によって、イネ体が硬くなり、葉色濃く、葉枯れや倒伏が少ないなど、出穂後の高温対策にも効果的である。
S33:登熟期間が高温に見舞われた年、地下水のかけ流しを行った事例では、かけ流しで千粒重が高まり、タンパクが低下するなど、品質が向上した(金山酒米研究会)。
S34:酒米づくりの終盤に入って注意を払うのが刈り取り時期と乾燥法である。吟醸酒向け醸造では40%程度まで搗精した高度精白米を原料とするため、砕米率が低い米が望ましい。砕米率は刈り取り時期で変動する。雪女神によれば、砕米率を高めない刈り取り適期は出穂後の日平均気温積算値で950~1150℃、刈り遅れによって砕米率、胴割粒歩合が高まる。
S35,S36:酒米の乾燥法は大粒、心白粒という酒米の特性によって、一般米とは異なる。酒米は一般米に比べ粒が大きく、表面積も大きいので、乾燥初期は乾燥しやすい。また、心白部分は水分の移動が容易で、乾燥速度が早く、心白部分は細胞間の結合力が弱く胴割れしやすい。胴割れ米の多い米は精米時に砕米が発生し、歩留まりが悪くなる。また、高精米では、白米水分がかなり低くなるので、玄米が過乾燥であると、白米も過乾燥になり、酒造りの際の吸水時に砕米が発生しやすくなる。酒米の生もみの乾燥温度は、同一風量で一般米より5~10℃下げ、35℃以下、毎時乾減率は0.5%以下で行うなど、時間をかけて慎重に乾燥させる。
2024年3月27日 09:31