酒米栽培、高温下での新たなデータ

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 山形県令5年産酒造好適米品種の品質は高温障害によって、主力品種「出羽燦々」1等米以上が65%、「雪女神」が同70%、平年より30%近く低下しました。
 その要因が心白未熟粒(サタケ穀粒判別器 醸造用による)の多発生です。写真からは、整粒と心白未熟粒では粒の大きさは同じようにみえますが、心白の大きさには明らかに違いがみられ、心白未熟粒は粒全体が乳白状に見えます。穀粒判別器によれば、写真の雪女神の整粒歩合は69%、出羽燦々は45%、出羽の里は54%です。
 「つや姫」などの一般米玄米の外観品質の低下要因は、登熟期間の高温に起因するモミ内のデンプン蓄積量の不足による心白米、背白米、腹白米、乳白米、未熟粒や胴割れ米の多発生によるとされています。これらの外観品質が不良な米粒は、登熟期間中の平均気温が26~27℃を超えると急増することが知られています。とくに、高温条件下では窒素施肥も密接な関係があり、若松らは背白粒の発生は稲体窒素濃度や玄米窒素含有率が低いと高くなることを明らかにしています。
 そこで、登熟期間(出穂後40日間)の平均気温が27~28℃で推移した令5年の金山、新庄産酒米の「出羽燦々」と「雪女神」のサンプルの玄米タンパク質含有量(FOSS社による)と心白未熟粒歩合との関係を見たのが図1,2です。
      タンパクと心白未熟粒(1).jpg      図1 玄米タンパク質含有量と心白未熟粒歩合(出羽燦々)
タンパクと心白未熟粒(2).jpg     図2 玄米タンパク質含有量と心白未熟粒歩合(雪女神)
 両品種とも、玄米タンパク質含有量と心白未熟粒歩合には負の関係がみられ、タンパク質含有量が低いサンプルは心白未熟粒歩合が高い傾向を示しました。
 さて、図1,2の結果は、玄米タンパク質含有量は出穂後の窒素吸収量の多少に影響されたと仮定すると、高温下では窒素吸収量が多いと玄米タンパクは高まるが外観品質は高まることになります。本図をみた生産者からは、タンパクが高いのは施肥量が多かった、落水をできるだけ遅らせた、タンパクが低かったのは穂肥を例年通り1.5kgとした、などなどの声が聞かれました。
 生産現場から得た本図は、高温下で外観品質のリスクを最小限に抑え、合わせて高タンパクをも抑制する穂肥の時期・量をどうするかの判断と実践に一つの示唆を与えていると考えています。これから取り組むべき喫緊の課題です。


 

2024年2月19日 11:59