令和4年産酒造好適米品種の玄米特性
弊社は平成18年(2006年)から全国の酒米産地と蔵元から送られてくる酒造好適米品種500~600点のサンプルの品質調査を行っています。調査項目は、酒米特性である千粒重、心白率、タンパク含有率、そして玄米形状などです。調査データは生産者、蔵元に送付し、米作りと酒造りに活用いただいております。
品質調査に当たっては、まず、サンプルの外観を肉眼で確かめたのち、サタケ穀粒判別器(醸造用)で品質を、近赤外分光光度計で玄米タンパク含有率をそれぞれ測定します。4年産の調査概要を紹介しましょう。
ここで取り上げた酒造好適米品種は棒グラフ左から、北海道産吟風・きたしずく、山形県産出羽燦々・出羽の里・雪女神、福島県産五百万石(A)、富山県産五百万石(B)、兵庫県産山田錦・愛山、岡山県産雄町です。
本グラフで特徴的なのが山形県産雪女神です。千粒重が28gと大きく、心白率が10%以下と低く、玄米形状は長さが長く幅が小さい、玄米タンパク含有率は低い。雪女神のこれらの特性、すなわち、大粒で、心白の発現が点状で小さいのは高度精米で崩れない、さらに低タンパクは最高級の大吟醸酒用酒米に向いていることを示しています。工業技術センタ-は「雪女神の酒質は山田錦と比較すると味がシャ-プで、濃厚にしてキレがある」と高く評価しています。今後の伸びが楽しみな大吟醸酒用の原料米です。
雪女神に対し、富山県産五百万石は千粒重が小さく、玄米の厚みが薄く、タンパク含有率は8%と高いという結果でした。これらのデータは、極早生品種の五百万石は、出穂後の高温(出穂後20日間の平均気温27.2℃)の影響を受けたのでないか、ということを示しています。
さて、近年開発された良食味米品種「つや姫」、「きぬむすめ」、「にこまる」などは高温耐性が優れていると評価されています。一方、酒米品種は一般品種より高温耐性品種の開発は遅れを取っていましたが、広島県では高温耐性「広系酒44号、45号」を育成しています。今後、高温耐性の酒造好適米品種の開発にも拍車がかかるでしょう。期待しています。
なお、アスクでは、これまでの玄米特性の調査に加え、アルカリ崩壊性による蒸米酵素消化性の定量評価などの新たな分野にも挑戦したいと考えています。
2023年3月30日 10:58