泰西農学の成果第1号"塩水選法"

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 山形地方気象台は3月31日桜の開花宣言、平年DSC_1790.JPG

より13日早い開花です。同気象台が観測を始めた1953
(昭和28年)以降、最も早い記録で、3月中の開花は
始めてとか。田んぼの草も緑の濃さを増し、春の陽に
輝いています。
 さて、4月1日はこの指とまれの平吹正直さん恒例の"塩水選"の日です。アスク社員も駆けつけ、この日塩水選したのは、酒造好適米品種「羽州誉」、「龍の落とし子」、「改良信交」の種子生産用(原種)と「羽州誉」の栽培用種子です。
 塩水選は充実した種子を選ぶ作業で、米作りの基本的技術の一つです。水10リットルに塩2.1kgを入れると比重1.13の塩水になります。この塩水に種子を入れると、比重の小さい充実不良な種子は浮き、比重の大きいよく稔った種子は沈みます。浮いた種子は捨て、沈んだ種子を良い種子として選びます。
 塩水選法は、141年前の明治15年(1882)、福岡農学校兼勧業試験場の横井時敬(ときよし)が「大日本農会報告」14号に「塩水をもって稲種を水選する法」として発表した我が国農業技術の第1号であり、科学農法の先駆けとも言われています。その後、塩水選法は全国に広く普及、140年にもわたる長命技術として米づくりに大きく貢献してきました。
 しかし、近年の種子調製の高度機械化の進展によって、塩水選を必要としないほどに種子の精選が向上しています。かつて、農村の春到来の原風景でもあった塩水選は、今やその姿を消そうとしています。ICTの進展でこれからの米づくりはスマ-ト農業だ、とも喧伝されています。
 高度情報化の今日、塩を水に溶かしてタネを選ぶ、という方法は稚拙に見えるかもしれません。しかし充実した良い種子を選ぶ方法が何れであっても、優れた種子は健苗を育み、ひいては高品質の酒米生む、と言って過言ではありません。「稲のことは稲にきけ」、横井時敬のこの有名な語録を肝に銘じ、今年もまた米作りに汗を流したい。
 

2023年3月31日 10:43