良質酒米生産に向けた栽培技術のポイント(8)
28 金山の酒米づくりの特徴の一つがケイ酸質資材の施用である。穂肥施用と同時期にケイ酸資材を散布、あるいは流し込みを行っている。その効果を調査した結果、品質に対する効果は判然としなかったが、収量はアップした。施用によってイネが硬くなり、秋になっても葉枯れや倒伏が少ないというのがその評価である。(ゆびきりげんまんグループの一人は資材の施用により、美山錦の千粒重を高め、酒米コンテストで毎年受賞している)。 (ケイ酸の吸収量は幼穂形成期以降に著しく増加する。この要因は、水稲側からは根群が作土層に十分に伸長していない生育初期の場合、ケイ酸の積極的吸収が難しいこと、水稲のケイ酸要求度がまだ高まっていないこと、土壌側からは、土壌還元の発達に伴い溶出が促進されることから、生育後半に土壌還元が進むことにより、ケイ酸供給能が高まることによる。このため、幼穂形成期以降のケイ酸供給を重視したケイ酸質肥料の施用が効果的である。)
29 金山町で調査を始めたころ、先述したように黒ボク土壌のタンパク含有率が高く、土壌型でタンパク質含有量には明らかに違いがみられた。しかし、量より質をめざし、施肥量を少なくする、的確な穂肥を心がけることで、タンパク含有率は低下してきた。土壌型別の平均値でみると、タンパク質含有量にほとんど差は見られず、ほぼ7.5%以下を示すようになった。タンパク含有率を毎年分析し、生産者一人一人にそのデータを提示したことも好結果をもたらしたのであろう。
30 さて、酒米づくりの終盤にはいって、注意を払うのが刈り取り時期と乾燥法である。雪女神のデータによれば、刈り取り適期は出穂後の日平均気温積算値で950~1150℃、刈り遅れにともなって胴割れ粒が発生しやすくなる。
31 酒米の乾燥法は特性である粒の大きさ、心白率によって一般米とは異なる。千粒重が大きく、心白率が高い原料米は乾燥速度が早いことに留意する。(酒米は一般米に比べ粒が大きく、表面積も大きいので、乾燥初期は乾燥しやすい。また、心白部分は水分の移動が容易で、乾燥速度が早く、心白部分は細胞間の結合力が弱く胴割れしやすい)。酒米の生もみの乾燥温度は、同一風量で一般米より5~10℃下げ、35℃以下、毎時逓減率は0.5%以下で行う。
2022年11月 1日 09:45