良質酒米生産に向けた栽培技術のポイント(10)

P36.jpg 36 大粒の酒米、玄米の調製段階でふるい目幅を大きくすることで得ることができる。ふるい目幅は2.0mmが一般的であったが、雪女神の普及によって、2.1mmに切り替わりつつある。金山、新庄、山形の生産者は2.1mm網を使用。2.0mmから2.1mmに切り替えることで、千粒重は大きく、整粒歩合がアップし、タンパク含有量は低下するなど、品質は明らかに高まる。
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 37 反面、収量は2.0mm選別より当然ながら減収する。金山の出羽燦々で平成23~令和3年産まで毎年調査した結果では、生産年、生産者で減収程度は異なる。生産者AはB,Cより明らかに減収程度が大きく、年次変動も大きい。Cの減収程度は年次変動が小さく安定して低い。平均すると、5.6%、30kg近く減収する。このため、金山の生産者には2.1mmへの切り替えには当初難色を示した。生産規模の大きい酒米生産者ほどその影響が大きいからである。しかし、平成29年産からは品質が向上するなら、ということで全員が2.1mm選別に切り替えた。指切りげんまんグル-プも同様の経過をたどっている。
P38.jpg 38 金山酒米研究会の出羽燦々27年産、28年産について、研究会全員の千粒重と減収率との関係から、減収率は千粒重25gでは平均10%、26gで7%、27gで5%、28gで3%と試算した。2.1mmで選別した場合の減収程度には明らかに品種間差がある。これは、品種特性によって玄米の長さ、幅、厚さが異なるからである。アスク試験田の調査によれば、出羽燦々は厚みがあることから減収率は平均して5%ほどにとどまるのに対し、長さ、幅は大きいが厚みがない雪女神は25%ほど減収した。美山錦のように千粒重の小さい品種は35%ほど減収した。
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 39 大粒・高品質の酒米づくりは、2.1mm選別でも減収に耐える粒厚の厚い米に仕上げることにある。一粒、一粒の最大限の大きさは、もみ殻の大きさで決まり、このもみ殻にどれだけのデンプンを蓄積するかにある。玄米の肥大は長さ⇒幅⇒厚さの順に進むことから、厚みのある玄米の形成は、登熟中~後期の気象、葉、根の稲体活力に影響されるであろう。とくに稲体活力の維持が重要である。そこで、そのための技術をまとめてみた。図に示した各生育時期のそれぞれの技術はいずれも米づくりの基本技術と呼ばれるものである。土づくりから収穫・乾燥・調製までの酒米づくりの基本技術の積み重ねが一粒、一粒を大きく育み、その米が蔵元から信頼され、芳醇な酒を醸すと言えるのでないだろうか。平成17年から、山形市本沢地区、金山酒米研究会、新庄市ゆびきりげんまん、河北酒米研究会との付き合い、そして、全国の酒米産地の品質調査を通じて得た私なりの結論である。












2022年11月18日 09:32