「良質酒米生産に向けた栽培技術のポイント」(3)

P11.jpg 11 酒米の特徴が心白粒である。心白がきれいに入った大粒の米をみると、これぞ酒米と思う。これまで、酒米適性としての心白粒は、その発現が多く、大きさも大きいのが良いとされてきた。反面、近年の醸造技術の進歩などから心白をさほど重視しない傾向にあるという。吟醸酒などの精米歩合の高い特定名称酒の製造では、精米時に砕米が少なく、高度精米が可能な小さい心白や、心白の横断面が線状のものが求められている。心白粒は中心部のデンプン相互の接合が緩いため、間隙が大きい。このため、光の乱反射によって白色不透明に見える。心白の入り方、大きさは品種で特徴がある。玄米を横方向に切ると、心白の形状は5つのタイプに分類される。山田錦は線状型と言って横一文字の線が走って見える。出羽の里は眼状型と言って、眼状の形に見える。雪女神は点状型が多い。心白は大きすぎると高度精米で砕けやすいと言われている。
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 12 心白発現の多少は品種特性であるが、心白発現率(静岡製機 穀粒判別器による)にも年次変動がみられ、アスク試験田では25%から60%までの大きな差がみられる。
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 13 出穂後の気温と心白発現率との関係をみると、心白粒の発生は出穂後の気温に影響され、出穂後20日間の気温が高いと心白率は高まる。しかし、気温の高い年の心白粒は心白が腹に流れる腹白状が多く、乳白粒のように見える(写真)。
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 14 金山酒米研究会の事例では、出羽燦々の心白は、出穂後40日間の平均気温が23℃以上になると大きくなるが、その多くは腹白型となり、米の外観は乳白状を呈する。出羽燦々の玄米品質からみた心白発現率は15~20%に抑えたい。この時の出穂後40日間の平均気温は22℃であり、登熟最適気温とも一致する。もみ数との関係では、もみ数が多いと心白率は低下する。これはもみ数が多いと、千粒重が小さくなり、心白発生が抑制されるためでないか。心白粒の発生は同一品種であっても、生産年や生産者間での変動が大きく、品質を測定する機器間(サタケ、静岡製機)でも違いが大きいなど、複雑であり、心白の発現には不明な点が多い。













2022年10月 7日 09:32