「塩水を以て稲種を水選する法」

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 塩水の比重測定  充実不良のモミは浮く

 早いもので4月、桜前線北上中ですが、県内の山里は、大蔵村肘折190cm、西川町大井沢 170cmもの残雪(3月31日)に覆われています。
 平野部の田んぼはすっかり春の装い、この指とまれの平吹正直さんは畦ぬりの手を休め、4月1日の年中行事になっているタネもみの塩水選を行いました。塩水選をしたのは、酒造好適米品種「羽州誉」、「龍の落とし子」、「改良信交」の種子生産用と栽培用の品種です。
 塩水選は充実したタネもみを選ぶ作業で、米づくりのもっとも基本的な技術です。塩水選は140年前の明治15年(1882)、福岡農学校兼勧業試験場の横井時敬(ときよし)が「大日本農会報告」14号に「塩水を以て稲種を水選する法」として発表したわが国農業技術の第1号です。水10リットルに塩2.1kgを入れ、比重1.13の塩水にモミを入れると、良く稔ったもみは沈み、不良なモミは浮く、この変てつもない作業が科学農法の先駆けともいわれています。 塩水選種法は、その後全国に指導奨励され、山形県東田川郡では明治26年(1893)「米作改良法」を設けその筆頭に本技術を掲げています。
 雪解けを待って、家々の軒下で行われる塩水選は農村の風物詩でした。この原風景は今その姿を消そうとしています。種子調製施設には高度な選別機械が導入され、塩水選を必要としないほど、種子の精選が向上したからです。
 しかし、選種が何れの方法であっても、高品質な酒米づくりにとって、充実したタネもみは、太い苗と茎に育ち、大きなモミを着け、大粒で心白が入った酒米を生むと言っても過言ではないでしょう。

2022年3月31日 11:07