人と風土が育む山形の酒米(15)

1-2月DSC_0840_.jpg春近し、飯豊山を望む(飯豊町にて)
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 <心白発現>

 従来、酒米適性としての心白粒は、その発現が多く、大きさも大きいほうが良いとされてきた。一方、近年の醸造技術の進歩などから、心白を重要視しない傾向があるほか、吟醸酒などの精米歩合の高い特定名称種の製造では、精米時に砕米が少なく、高精米が可能な小さい心白や横断面の形状が線状のものが求められている。
 心白発現は品種特性によるが、同一品種であっても生産年や生産者による変動が大きい。変動要因は複雑であるが、最も大きいのが登熟期間の気温であろう。出穂後40日間の平均気温と心白率との関係では、気温が高くなると心白率は高まるが、その関係は23℃に折曲点を持つ2本の回帰線で表せる。すなわち、心白率の増加は20~23℃までは小さいが、23℃を超えると大きくなり、心白形状は腹白型が多く玄米外観は乳白状を呈する。また、登熟初期(出穂後20日間)の気温較差が大きいと発現が高まる。
 出羽燦々の心白型は登熟期間の高温条件で腹白型が多く、その割合が20%以上では玄米の外観が乳白状を呈するため15~20%の鮮明な心白粒に抑えたい。この時の出穂後40日間の平均気温は22℃であり、登熟最適気温と一致する。
 心白発現は登熟期間の気温以外に、もみ数、粒の大きさ、などを決定する生育条件、施肥法、栽植密度の肥培管理などにも影響される。心白発現が産地、生産者間で変動が大きいのもこのためである。金山酒米研究会の事例では、生産間の変動は変異係数で20~40%と大きかった。同一サンプルでも千粒重は2.0%、玄米タンパク質含有率5~6%前後であった。美酒を醸す鮮明な心白、これこそが酒米、しかし心白の発現や大きさをもたらす要因や気象条件、栽培条件との関係には不明な点が多いという(池上)。 

2022年3月 1日 09:59