人と風土が育む山形の酒米(12)

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 <雪女神 >

  日本酒は大吟醸、吟醸といった特定名称酒に需要が高まっているほか、今後、輸出をも含めた需要拡大への期待が高まっている。大吟醸酒の原料米は、低タンパクであり玄米千粒重が大きく心白発現率が高く、かつ心白率(心白の大小)が高過ぎず、50%以上の高度搗精が可能であることが求められる。
 純米酒なら「出羽の里」、吟醸酒なら「出羽燦々」が高い評価を受けてはいたが、県内の蔵元が喉から手が出るほど欲しいのが大吟醸酒用の県産最高級酒米であった。県内の蔵元は大吟醸酒にはブランド力のある「兵庫県産山田錦」を最上位の銘柄向けに仕入れるケースが多かったからである。
 蔵元の声に応えるべく県は独自で大吟醸に向く酒米品種の開発目指す。そして誕生したのが「雪女神」だ。雪女神は「出羽の里」を母に、宮城県の酒造好適米「蔵の華」を父に育成された。実に15年の長期間にわたり、2千種類を超える系統の中から選抜しただけでなく、試験醸造を繰り返し選び抜き2014年(平26)に県奨励品種に採用された。大粒で心白の発現は点状で小さく50%以上磨いても崩れないという高度精米に対応できる特性を持つ。さらに低タンパク質含有率の特性をも持つ。

 雪女神の酒質は山田錦の大吟醸酒と比較すると味わいがシャープで、「濃厚にしてキレがある飲み口」が特徴という。さらに、「濃厚にしてキレがある」飲み口は世界の白ワイン市場で戦える味であり、雪女神は国内の日本酒通だけでなく海外ワイン市場まで見据えて完成した味の酒なのだ(小関敏彦氏)。全国新酒鑑評会(令2酒造年度)で6銘柄が金賞を獲得、フラッグシップ酒米となった雪女神で造られる酒はとくに人気を集めるようになった。酒米の最高峰「山田錦」の醸造特性に匹敵し、かつ山形らしい“味本位”の最高級酒が製造できる酒米、今後の伸びが楽しみな大吟醸用の原料米だ。

 

 

2022年2月17日 13:49