人と風土が育む山形の酒米(11)

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<出羽の里>

山形県は高級酒の差別化で生き残りをかけ、出羽燦々と前後して新たな酒米の開発を進めていた。吟醸酒や純米酒という、いわゆる特定名称酒の高品質化だ。そのためには、出羽燦々だけではカバーできない部分を補う新たな酒米を必要としていた。
 平成6年、県農業試験場庄内支場(現山形県農業総合研究センタ-水田農業研究所)にて「滋系酒56号」(のちの滋賀県の酒造好適米「吟吹雪」)を母に、「山形酒49号」(のちの「出羽燦々」)を父に交配して誕生したのが「出羽の里」である(平成16年)。本品種は大粒で心白発現が大きいのに加え、出羽燦々よりタンパク質含有率が低いなどの酒造適性を持っている。また、冷害やイモチ病に強く、優れた栽培特性をも合わせ持っている。
 山形県工業技術センタ-が原料米分析と試験醸造を6年間にわたって実施した結果、気象条件の変化にもかかわらず大粒性と低タンパク性が安定して再現された。精米歩合が高くても玄米を多く削らない=原料コストが抑えられる、アミノ酸度が低く、きれいで透明感のある酒質になるのが出羽の里の最大のセールスポイントである。
 出羽の里による商品は、コストパフォ-マンスの高い市販酒を評価する各種鑑評会で大賞を獲得するなど、低精白の商品で高い評価を得ている。2016年ロンドンで開催されたIWC(インタ-ナショナル・ワイン・チャレンジ)で、1281銘柄の中から厳しい競争に勝ち、IWC2016の「チャンピオンSAKE」を受賞したのが出羽桜酒造の「出羽桜出羽の里」である。若い辛口の純米酒で青いりんごのような香りとかすかに残るスパイシ-な風味が世界各国の57名の審査員の絶賛を受けチャンピオン賞に輝く。この受賞を機に、山形の新しい発泡清酒の原料米に指定されるなど、そのニ-ズは増加している(続く)。

 

 

2022年2月17日 12:30