人と風土が育む山形の酒米(10)

  P1070834.JPG  光の春、うっすらと姿を見せた月山(2月13日 山形市郊外にて)
 光の春、2月中旬に入ってからの山形の雪は一服いうところでしょうか。それでも、豪雪地の最高積雪深は大蔵村肘折331㎝、西川町大井沢277㎝、尾花沢市206cmなどと、いずれも平年を上回っています。県内の蔵元からは寒仕込みを終えた新酒がお目見えする季節となりました。「人と風土が育む山形の酒米」を新酒の芳醇な香りを楽しみながら引き続き読んでいただければ幸いです。
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  <出羽燦々>

 酒米特性として、心白が大きく雑味になるタンパクが少ない米、栽培上からは丈が短く倒伏しにくい品種を求めて、県外種ではあったが酒米の「美山錦」と「華吹雪」を交配(昭60)した。交配で得た27粒の交配種子は試験場の研究者たちによって地道な選抜が繰り返される。平成3年には奨励品種をめざしての予備調査、同5年には現地調査を行い、長野県産の美山錦と比較検討。適地はササニシキが栽培しにくい中山間地とした。倒伏しないか、中山間地での適性は、品質の安定性や収量は・・・。いずれも美山錦を上回るデータが得られた。醸造試験では、吸水性や品質の安定性に優れ、「やわらかくて幅がある酒」と高い評価を得た。
 平成7年、県奨励品種に決定。自前の酒米がようやく誕生した。着手から実に11年の歳月が流れていた。品種候補名は「雪の舞」、「「いろはに穂」、「つばさ21」などがあったが、選考の結果「出羽燦々」と決まる。県内の数ある山の中で、降り積もった雪が伏流水となり、良質の酒造りに寄与して標高1400メートル以上の山が33ある。その33と出羽の山々。燦々(さんさん)ときらめく米をイメージしてネーミングされた。
 「出羽燦々」は、大粒で心白発現率が高く、タンパク質含有率が低いという酒造適性を持っている。かつ耐冷性や耐倒伏性など栽培特性に優れた特性を持っている。出羽燦々の開発と並行して、県工業技術センンターを中心に新たな醸造方法の研究を行い、日本酒の原材料である米、水、酵母、麹菌のすべてが山形オリジナルとなる純米吟醸酒「DEWA33」が誕生している。「DEWA33」はオール山形をコンセプトに造られた商品である。原料米はもちろん「出羽燦々」、酵母は山形県が開発した山形酵母、種麹は「オリーゼ山形」を使用、“やわらかくて巾がある”酒質を目標とし、DAWA33審査会に合格したもののみに与えられる認証名である。
 出羽燦々は「酒米の里金山」を中心に作付けを伸ばした。全国の著名な酒米品種の多くが半世紀前に育成され作りにくいのに対し、出羽燦々は品質、収量、作りやすさといった優れた特性を併せ持っている。また、育成当初から工業技術センターで醸造特性の検討を行ってきた。これらが評価され、県内外の蔵元から広く利用され、生産数量は全国第4位(平21~25年)までに成長した。しかし、ここ数年は「秋田酒こまち」(秋田県)、「越淡麗」(新潟県)などの新品種に押され気味である(以下、次号)。

 

 

2022年2月14日 10:20