高品質米づくりの"不易"なるもの

DSC_0957.JPG黄砂が去り3日ぶりにすっきりとした青空が広がる(4月1日 山形市郊外 後方は月山)
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  平吹正直さん、アスク試験田担当社員による塩水選作業

 4月1日、昨日まで黄砂で煙っていた空はきれいに晴れ渡り、月山が真っ白な姿を見せました。この日は、この指とまれの平吹正直さんのタネもみの塩水選、この日の塩水選作業は恒例になっています。アスク試験田担当社員が駆け付け、酒造好適米品種「羽州誉」、「龍の落とし子」、「改良信交」、「酒未来」の原種生産用と、醸造用「羽州誉」の種子を塩水選しました。
 これらのタネもみは、昨年アスク試験田で社員が田植えから収穫・調製まで手作業で生産したもので、充実していないモミや粃も混入しています。このため、良く稔ったモミを選ぶ塩水選は欠かせない春作業です。塩水選した種子はモミが充実しているため、発芽、生育が均一で丈夫な苗に育ちます。塩水選の比重液はうるちで1.13(水10リットルに食塩2.1kg)です。
 塩水選は、明治15年(1882)に農学者横井時敬が福岡県農業試験場で創案以来全国の稲作農家で今日まで行われているもっとも長命な米づくりの技術なのです。山形県に塩水選法が入ってきたのが明治26年1893)、庄内地方の東田川郡(当時)では「米作改良法」を設けて、その筆頭に塩水選を取り上げているほどです。
 ところで、米づくり農家に脈々と受け継がれ、農村の早春の風物詩でもあった塩水選、いまでは幻の技術になりつつあります。近年の種子調製施設の拡充によって、農家が購入する種子は塩水選を必要としないほどに充実しているからです。
 ”良いタネもみを選ぶ”、種子を選ぶ手法は変化しても、米づくり、とりわけ大粒の高品質酒米づくりには”不易”な基本技術です。アスク社員が塩水選の作業を体験し、今年の酒米づくりに決意を新たにしたのは言うまでもありません。

2021年3月31日 11:01