"穂肥"施用は匠の技からICTへ?

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上図の緑は穂肥を施用する、赤は施用しない、黄色は再調査部分(山形農研センター資料より)
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ドローンが葉色の濃さを判定して穂肥を施用するか?
 天性のおいしいコメ「つや姫」、酒造好適米「雪女神」とて「玉磨かざれば光なし」、匠の技があって、豊かに実り、ご飯や酒のうまさにさらに磨きがかかる。
 ごはんや酒のうまさに関係するのが米に含まれるタンパク質含量の多少である。一般に、米のタンパク質含有量が多いと、ごはんは粘りがなくなり硬く感じる。酒米ではタンパク質が少ないとアミノ酸の上昇を抑え良い酒質が得られるという。
 タンパク質含有量は品種の特性よりは栽培方法、すなわち稲の育て方と深く関係し、中でも、窒素肥料の施用方法の影響が強い。窒素肥料は通常、元肥と穂肥と呼ばれる追肥の2回に分けて施用されるが、タンパク質含量を左右するのが穂肥である。このため、匠は米作りの数多い技のなかでも穂肥に最も腐心する。
 穂肥は、茎の根元に幼穂が生まれる7月中旬に施用する。適切に施用することで、収量、品質そしてうまさに結び付く一石三鳥の優れもの。米づくり技術ではもっとも重要なものだ。穂肥の施用は生育状況、気象条件、土壌条件などが複雑に絡み合って、毎年同一ではない。生育がどう推移するのかの予測も必要である。
 匠は目の前に青々と広がる稲を観察する。田んぼに入って、草の長さ、茎の数、葉の色の濃さ、産毛に包まれた幼穂を調べる。そしてこれまで培ってきたノウハウと経験から、穂肥の時期と量を決める。うまい米を育む匠の技が発揮される時だ。
 しかしこの技は大規模稲作経営では、耕作する圃場数が多いため受け入れるのは容易ではない。そこで今注目されているのがICT(情報通信技術)である。リモートセンシングによる一枚一枚の田んぼの生育状況、水管理、気象、土壌などのデータ、そして匠の技が数値化され、スマートフォンから得ることができるであろう。動散を背負っての追肥はドローンに代わり、ドローンは一枚の田んぼでも葉色の濃い所には少なく、薄い所には多く施用する・・・。匠が築き上げてきたコメづくりの技、新たな展開を迎えるのであろうか。

2020年7月 2日 10:47