良質米を育む作溝・中干し

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作溝する山口泰弘さん(酒未来)、平吹正直さん(羽州誉)
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アスク試験田の作溝(6月28日()

 サクランボが旬を迎えるころ、田んぼにも賑わいが戻ってきます。作溝作業が始まったからです。イネは田植えから湛水状態で育てられてきました。湛水には生育に必要な水を供給するほか、保温効果、雑草抑制効果、養分の供給、地力の維持などの役割があります。反面、水のかけすぎは根の生育を阻害し、収穫作業にも支障をきたします。良質米を育む水、その水をコントロールする一つが作溝・中干作業です。
 田植えから40日目頃になる6月下旬、気温上昇とともに田んぼは前年に耕込まれたワラが腐熟し硫化水素や有機酸など、根の生長に有害な物質が生成されてきます。田んぼに入ると、特有の泥の臭いがします。そこで、田んぼの水を落とし、数メートルおきに15cmほどのV字形の溝を切ります。その後10日間ほどは湛水せず、田んぼに小ヒビが入るほど干します。中干しと呼んでいます。
 作溝作業は、手作業の時は泥だらけになりながらの重労働でしたが、今は田植え機を改良したもの、バイク式乗用型のものなど機械化されています。とはいえ、作溝は暑い中での作業、楽ではありません。それでも農家がこの作業を励行するのは、良質米づくりには欠かせないからです。
 作溝と中干しで、土が締まりイネの生育は逞しくなります。草丈が伸びすぎるのを抑え倒伏に強くなります。のみならず、収穫直前まで溝に水を入れ田んぼに潤いを与えることで、コメ粒は充実し、タンパク質含有量は低下します。
 適度にしまった田んぼでは大型コンバインが効率的に稼働できます。秋雨が降り続く年、作溝をしなかった田んぼでは刈り取りに苦労します。収穫まで大きな役割を果たす作溝、おいしい米づくり、美味しい酒づくりにとってのちのちまで役立つ「転ばぬ先の杖」の技術といえます。
 

2020年6月29日 10:10