「うまい米を育む」Ⅲ 天性のもの

つや姫構造.jpg つや姫2.jpg

「つや姫」のごはんの表面構造とアミノ酸含有量
 (山形県農業総合研究センター資料より)

3 うまい米を育む天性のもの

 平成22年に華々しくデビューした「つや姫」、28年産の食味ランキングでは山形県産はもちろんのこと宮城県産も特Aを獲得した。「炊いてほれぼれ、冷めてもおいしい」、「お米はここまでおいしくなれる」、「おいしさ、つやにでる」、「つや姫」のうまさを入れ込んだキャッチフレーズだ。
 コシヒカリと食べ比べすると、「つや姫」の評価はごはんの光沢・外観・香り・味・粘り・硬さ・総合評価、いずれもコシヒカリより優れている。おいしいごはんと感じるのは、第一に粘り、硬さなどの物理的特性に依るが、この特性はこめに含まれているアミロースやタンパク質などの化学成分量に起因する。一般的には、良食味品種では両成分とも低いが、コシヒカリとつや姫でアミロース含量とタンパク質含量を比較すると両品種間にはほとんど違いはない。「つや姫」のうまさの秘密はどこに潜んでいるのだろうか。その秘密に分け入ってみよう。
 秘密の一つがごはんの構造だ。電子顕微鏡で観察しコシヒカリと比べると、ごはんの表面の構造は、両品種とも糊の糸がよく分散した細繊維状を呈している。細繊維状構造はごはんの「粘り」と関係が深く、両品種とも「粘り」が強い特徴が出ている。違うのが、細繊維状構造の直下に発達した海綿状構造だ。その厚みを比較すると、コシヒカリが約20μm、これに対しつや姫は40μmと2倍の厚さがある。海綿状構造の厚さは、ごはんの「柔らかさ」、「弾力性」に関連することから、柔らかく弾力性に富む「つや姫」の食感につながっていると推察されている。
 秘密の二つが慶應義塾大学先端生命科学研究所(鶴岡市)のメタボローム解析で明らかにされた。つや姫はコシヒカリに比べグルタミン酸とアスパラギン酸の旨みアミノ酸が非常に多いという。これらの成分は他の食品においてもうまみ成分として知られており、つや姫のおいしさに直接かかわっている可能性が高い。
 「つや姫」と「コシヒカリ」とのごはんの構造とうまみアミノ酸の違い、最先端の研究で科学的に解明された「つや姫」特有のうまさ、それは天性のものと言ってよいだろう。

 

2020年4月21日 13:18