酒米適性による酒米サンプルの分類と特徴

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 アスク品質調査室には、品種・産地を異にする県内外から酒米サンプルが年間600点ほど持ち込まれます。これらのサンプルについて、玄米の形状(長さ、幅、厚み)、心白率、玄米千粒重、整粒歩合、玄米タンパク含有量等、酒米適性に関係する特性を調査しています。酒米特性は品種、生産年、生産者によって変動します。各形質間には相関関係があります。サンプル調査から、品種、生産年による酒米適性の把握や比較をするには調査する形質数が多くなるほど複雑になります。そこで、多くの調査形質を総合化して2次元のグラフで散布図として表示できれば、視覚的に品種・生産年・生産者別の特徴や比較が可能になります。そこで、統計学的手法である主成分分析を適用し、それぞれの主成分に意味づけされた酒米適性で生産年、生産者の分類を試みました。(注):主成分分析とは、p個の変量X1,X2・・・・・・、Xpのもつ情報をm個(m<p)の総合特性値Z1,Z2・・・Z(主成分と呼ぶ)に要約する手法)
 サンプルは平29年、平30、令1年産五百万石(富山県産、506点)、山田錦(兵庫県産、327点)、出羽燦々(山形県産、214点)、調査形質は玄米の粒長(X1),幅(X2),厚さ(X3),、千粒重(X4),心白率(X5)、玄米タンパク質含有率(X6)である(以下、変量と呼ぶ)。データ数は、総計で6300点である。
 五百万石:第1主成分スコアZ1と第2主成分スコアZ2の散布図を見てみよう。第1主成分は、X1(粒長)、X2(粒幅)、X4(千粒重)、X5(心白率)の負荷量がプラスで大であることから、第1主成分は玄米の大きさに関する総合特性値で酒米適性として好ましい”量的因子”と意味づけした。
第1主成分スコアがプラスで大の方向には量的因子が大きいサンプルが分布する。第2主成分は、X3(粒厚)の負荷量がプラスで大、X6(玄米タンパク質含有率)の負荷量がマイナスで大であることから、第2主成分は粒厚とタンパク含有率に関する総合特性値で酒米適性として好ましい”質的因子”と意味づけした。このことから、散布図の第1象限に分布する29、30年産の1/2ほどのサンプル群が量的、質的因子ともに大で、酒米として望ましい特性を有しているとみられる。これに対し、第3象限に分布する令1年産の1/2ほどのサンプル群は前者とは対称的である。第1と第2主成分の累積寄与率は74%であった(6変量のもつ情報量のうち、二つの成分で74%の情報量があることを示す)。

 山田錦:第1主成分、第2主成分とも各主成分に対する意味づけは五百万石と同様である。散布図から、第1象限には29年産、第4象限には30年産、そして第2象限に令1年産のサンプルが多く分布していることが読み取れる。サンプルは第1主成分の量的因子では平29=平30>令1に、第2主成分の質的因子では平29=令1>平30に位置していることから、酒米として望ましい特性を有しているのが29年産とみられる。第1と第2主成分の累積寄与率は70%であった。

 出羽燦々:主成分に対する意味づけや生産年別サンプルの分布は五百万石、山田錦とほぼ同様であった。

 以上、五百万石、山田錦、出羽燦々に3か年のデータを込みにして主成分分析を適用したところ、第1、第2主成分に対する意味づけ、両成分の累積寄与率は3品種とも同様の結果を示した。主成分分析によって、生産年を明瞭に分類できたが、富山県、兵庫県、山形県と産地が異なること、また、品種特性が異なるにもかかわらず、類似の結果が得られた要因は明らかでない。今後のデータ積み重ねで確認したい。 

 

 

2020年2月17日 11:09