米づくりにロマンを感じた一文

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穂が出そろった早生の酒造好適米品種(アスク試験田)

 真夏の青空が広がっています。アスク試験田の早生品種は穂が出そろい、中生「出羽燦々」、「雪女神」が出穂期を迎えています。
 さて、7月27日の朝日新聞「天声人語」に目を引き付けられました。その一部を引用しましょう。「梅雨の曇天が真夏の青空へと変わりゆくころ、米作りに励む農家は穂肥をまく作業に精をだす」とあり、山形県川西町で米を育てる浦田英明さんの話を紹介しています。浦田さんは「穂肥の成否で食味や収量も変わる。手をかければかけるほど味は良くなる。まく時期や量の判断は、農家の腕の見せどころ。稲に触れ、葉の色や茎の膨らみを丹念に観察する。晴れが続くか、暑すぎないか、天候を見極める」と。
 「梅雨明けの稲田に入りて穂肥まく追肥が要るのか稲に問ひつつ」の短歌も載せています。この歌には近代農学の始祖横井時敬の名言「稲のことは稲に聞け」と相通じるものがあります。
 しかしこの穂肥技術、近年は変わりつつあります。穂肥発祥の地を標榜する山形県ですが、米作りの経営規模拡大や高齢化、新たな肥料形態の開発などにともない、田植え時のみに肥料を施用し、穂肥を省略する施肥法が主流になってきました。重い動散を背負い、汗をふきふき田んぼの畦畔から肥料を散布する農家の光景は珍しくなりました。これも時の流れなのでしょうか。
 試験田にもついこの間穂肥を手まきしたばかり、米づくりへのロマンを感じさせた天声人語の一文でした。

2019年7月29日 11:44