粒形と酒米適性との関係(5)

粒形の品種間差異.jpg アスク試験田に作付している酒造好適米品種、美山錦・羽州誉・龍の落とし子(早生)、出羽燦々・出羽の里・雪女神・酒未来・山酒4号(中生)の29年、30年産米の玄米粒形を調査し、玄米の粒長、粒幅、粒厚の3形質間の関係を品種別に示したのが右図である。
 図で目につくのが、雪女神(○△)と出羽燦々(○△)である。雪女神は粒長がもっとも大で、出羽燦々は粒厚がもっとも大である。美山錦(○△)、羽州誉(○△)、龍の落とし子(○△)の早生品種群は3形質とも小さい。酒未来(○△)、山酒4号(○△)は中間に位置し、粒形の大きさには明らかに品種間差異が見られる。
 粒形の大きさに品種間差異がみられることは、玄米の肥大が長さ⇒幅⇒厚さの順で決定されることから、品種によって粒の大きさが最大になる登熟期間(出穂後日数)もまた異なることを示唆している。さらに、同一品種であっても、生産年で粒の大きさは異なっている。とくに幅と厚さで差異が大きいことから、粒形を測定することで、もみがらの大きさが決定される穂孕期間、および粒が肥大する登熟期間の気象条件、栄養条件、栽培条件などの影響を推察できる。

 次に、品種の粒形特性は精米特性とも密接な関係にあると考えられる。齋藤らは酒米の精米が玄米の長さ、幅、厚さが同じ比率に研削される原形精米に対し、玄米の表面を同じ厚さに削る扁平精米の方法が粗蛋白質の除去率が高いことを明らかにした(齋藤富雄ら:ふるいわけ法による酒造用白米の評価:醸協88-1 1993)。
 吟醸酒、純米酒など特定名称酒が増加し、それにともない高度精白になっていることから、酒造好適米品種にとって、精米特性がすぐれることが必須条件である。品種による粒形特性に適合した精米方法によって、生成酒の酒質向上が期待される。また、原料米の形状評価(粒の大きさ、整粒歩合、粒そろいなど)するグレインスキャナ-が開発(株サタケ:グレインスキャナ-を用いた酒米評価:第41回酒米懇談会講演要旨集 2017)されるなど、酒米の形状データは高度精米、精米の品質向上に役立つと考えられる。



2019年3月25日 12:08