粒形と酒米適性(タンパク質含有率)との関係(4)

玄米形状とタンパク.jpg 玄米粒形とタンパク質含有率との関係では、一般米について、玄米タンパク質含有率は粒厚が薄くなるにしたがい高くなる(松江:米の食味学;養賢堂)、粒の大きさとは負の相関が認められる(木戸:日作紀37;1968 谷:食糧研究所報9;1964)。酒米についての報告例は少ないが、千粒重が重い酒米ほど玄米タンパク質含有率は低い傾向がある(新潟農総研1977;アスク酒造好適米の栽培テキスト2018)。
 本調査の結果においても、山田錦、出羽燦々では粒厚が厚いとタンパク質含有率は低下するという負の関係がみられた。両者の相関係数は、山田錦30年産-0.28、同29年産-0.226、出羽燦々30年産-0.25、同29年産-0.25で、相関係数は高くはない。この両品種に対し、五百万石は粒長と正の関係を示し、相関係数は30年産0.48、29年産0.39であった。
 五百万石が粒長と玄米タンパク質含有率が正の相関を示した要因を推察しよう。①五百万石は富山県ではもっとも気温が高い7月下旬に出穂する(平年出穂期7月23日)。②米のタンパク質含有率は高温条件で増加し、その要因の一つとして、高温条件では地温が高くなることにより土壌窒素の無機化が進み、稲体窒素が上昇する(森田 敏:イネの高温障害と対策;農文協)。このことから、出穂後の登熟初期間の高温で稲体窒素濃度が高まりやすい土壌条件の下では粒の長さも比例的に促進されるのでないか。
 玄米の酒米適性のうち心白率や千粒重が品種の特性によるところが大きいのに対し、タンパク質含有率は気象、土壌条件、施肥法などの栽培環境に大きく影響される。このため、粒形との関係が明瞭に表れなかったとも考えられる。なお、千粒重との関係では、相関は高まり、年次込の相関係数は、五百万石0.500、山田錦-0.399、出羽燦々-0.395であった。

原料米と清酒.jpg

 
 酒造用原料米の特性は、形態と構造に関するもの、物理的性質、および化学的性質に区分される。これらの特性は、上図に示すように、精米以降のすべての清酒醸造工程と酒質に強く影響を及ぼしており、また、原料米特性は品種や栽培環境によって変化する(若井)。この一連の複雑な系に粒形と酒造適性との関係から得られた知見がどう役立つのか、今後ともデータを積み重ね検討したい。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                

2019年3月18日 11:15