成育期間の気温と酒造適性との関係(3)

3)気温とタンパク含有量との関係
 酒米のタンパク質は酒造りに大きく影響する要因の一つです。酒米は低タンパク質であることが求められます。タンパク質含有量は施肥法とくにN肥料の量や施用時期、また、土壌特性で変動します。
 金山の事例では、出穂後20日間の気温との関係がみられます。すなわち、この期間の平均気温が23℃と低い気温ではタンパク質含有量は高まりませんが、それ以上に高まると7.5%以上、26℃では8%まで高まります。これは、金山では黑ボク土壌での作付が多いことも関係していると考えられます。黑ボク土壌は、その特性から、N発現が成育後期まで続き、とくに高温条件下ではその発現が助長されると言われています。
 実際、そのコントロールはむずかしいのですが、黑ボク地帯は地下水灌漑が多いことから、かけ流すことで地温を下げ、土壌窒素の発現を制御し、タンパクが高まるのを抑えることができるのでないか。
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4)気温と胴割れ粒との関係
 酒米の精米歩合は食用米の90%前後とは異なり、吟醸酒であれば60%以下になるまで精米します。このため、胴割れ粒は砕米となり、蔵元からはもっとも嫌われます。
 金山の事例で、刈り取りの10日前頃の9月上旬の平均気温と胴割れ粒歩合との関係では、気温の低い年が胴割れ歩合は高く、気温の高い年が低いという傾向がみられました。なぜでしょう。この関係は、中山間地特有のものでないでしょうか。すなわち、登熟後期が気温が低い年は、穂の上部や1次枝梗着生モミは早く稔っているのに穂の下部や二次枝梗着生モミの稔りが停滞し、登熟や水分にバラツキが生ずるため、刈遅れや乾燥法が適切でない場合、胴割れ粒の発生を助長すると推察されます。このグラフは9月上旬が低温で経過したとき、適期刈り取りと適切な乾燥法を心掛けることがとくに大切なことを示しています。

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2016年3月18日 15:18