成育期間の気温と酒造適性との関係(1)

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 3月15日に酒造好適米「雪女神」の栽培技術・清酒製造技術合同研修会が開かれ、アスク技術顧問が「酒造好適米生産のポイント」について講演しました。その講演内容の中から、「出羽燦々」の成育期間の気温と酒造適性との関係を取り上げます。使用したデータは、気温が金山のアメダス、そして酒米特性はJA金山酒米研究会の生産の現場から10年間にわたって得られたものです。
 酒造好適米の特徴は、①大粒・豊満であること、②米中心に心白が鮮明にあること、③粗タンパク質含有量が少ないこと、④精米時に砕米が少ないことで、これらを酒造適性と呼んでいます。酒米適性に及ぼす気温の影響は、中山間地金山では平野部とは異なり、より強く表れることがわかりました。以下、紹介しましょう。

1) 出穂前20日間の平均気温と千粒重との関係
 酒米は30~70%も削られます。このため、大粒が好まれます。粒の大きさは、千粒の重さである千粒重という用語で表現されます。千粒重の大きさは、まずデンプンの入れ物であるモミ(頴果)を大きくすることにあります。それにはモミの大きさが決定される出穂前30日~出穂直前まで、とくに穂孕期間の出穂前20日間の気象や稲体のN栄養が良好であることです。
 そこで、出穂前20日間の平均気温(平成18年~27年)と玄米千粒重(研究会60数戸のサンプル平均値)との関係をプロットすると、2次曲線で表されました。この図によれば、気温が24℃までは、高い年ほど千粒重は大きくなっています。ところが、平成22年、27年は24℃以上になるとむしろ小さくなっています。出穂後の気温経過をみると、22年は猛暑、27年は逆に低温・寡照でした。このため、デンプンが十分に詰まらなかったと推察されます。もし両年とも、登熟期間の気象が好条件であったなら、千粒重はもっと大きくなったのでは?。とすれば、金山での「出羽燦々」のモミの大きさは、第一義的には出穂前20日間の気温に影響されると考えて良いでしょう。
 実際の場面では、この期間の気温は高く経過すると予報された時、適切な穂肥施用で稲体のN栄養を良好にすることでモミは大きく形成され、千粒重は増加することが期待できます。

 

2016年3月18日 10:12