インド西ベンガルのあぜ道から(11)

 帰国後待っていたのがアスク試験田のタネまきと春作業、遅れていた作業に汗を流しているところにBhatarの現地情報が送られてきました。それによれば、
①刈り取りは4月16日にスタートする。
②もみの乾燥は、刈り取った稲は束ねないでそのまま田んぼに並べて地干しする。
③脱穀は足踏み脱穀機で行う。
④もみ水分は地干しで15%になった。
⑤もみの精選は箕で行う。
稲刈りからモミの精選までが全て手作業での人海戦術とのこと、写真でその様子を紹介しましょう。
16618.jpg 16617.jpg 16612.jpg 
手刈りした稲は束ねないでそのまま地干し
16610.jpg 16616.jpg 16614.jpg
脱穀は昔懐かしい足踏み脱穀機で  地干しでも水分は15%に(水分計はケット)
16613.jpg 16615.jpg 16611.jpg
脱穀したもみは箕で精選

 それでは収量と品質はどうだったでしょうか。6品種の収量(もみ)はha当たり最高で3900kg、最低2400kg、平均で3100kgでした。この数字は、農業試験場が雨季に試作した収量の三倍近くにもなります。乾季作であれば、Bhatarでも3トンのもみ収量を上げることが実証されたのです。
 そして、Bhatarからアスクに送ってきた6品種のサンプルもみ、早速籾ずりして品質を調査しました。その結果は下表のとおりです。なお、①~⑤の文中のカッコ内の数字は、A,B品種を山形で作付けした場合の平均的な値です。
Bhatar品質.jpg①ふるい目1.85mmでふるった精玄米重のもみ重に対する比率、籾すり歩合は品種Dで極端に低く、そのほかも70%と低かった(A,B:80%)。
②玄米成分をサタケ食味計で測定すると、粗タンパク含有量は8%以上で総じて高かった。これは、高温下での登熟と登熟期間が30日ほどと短かったことから小粒化したためと考えられる(A:7.0~7.5%、B:6.6~7.0%)。
③アミロース含量は、高温登熟で低くなると考えていたが、19~20%と標準的は値であった(A、B:19%)
④食味値はタンパク含有量が高いことが影響して低かった(A:75、B:80)
⑤整粒歩合は低く、品種間の差も大きい。これは、未熟粒、被害粒(着色粒、奇形粒など)が多いことによる。高温登熟下で多く発生するとされる白未熟粒歩合はいずれの品種も数%であった(A、B:90%)。
⑥玄米千粒重は並みかやや小さめであった(A:22.1g、B:21.3g)。

P1030386.JPG P1030388.JPG 
品種A,Bの玄米品質と炊飯米

 玄米品質は、白未熟粒が多くなると想定していましたが、その発生は意外に少ないことに一安心。それでは食味は?、ということで品種A,Bを社員で食べ比べてみました。その感想を一言で云えば、”山形の米よりは見劣りするものの、ごはんの白さや粘りはまあまあ”ということでした。ごはんのおいしさも想定したよりは上出来でした。ただし、私達が感ずるごはんのおいしさが、そのまま素直にインドのレストランや食卓でも評価されるでしょうか?。


                                                                    

2015年6月 5日 10:08