インド西ベンガルのあぜ道から(6)

 西ベンガルのラビシーズンなら、東北・北陸の良食味米品種でも、農業試験場の周到な管理の下では、成育は多収改良タイプのインド稲と比較して遜色ないことがわかりました。反面、出穂期が3月中旬以降にずれ込むとすれば、稔るのは西ベンガルの日中の気温30℃近く、そして4月に入ると一気に上昇する頃となります。東北・北陸の稲は高気温下での稔りは全く弱い。ヤセ米やシラタ米が発生し、品質・食味が著しく低下します。一難去ってまた一難、心配のタネは尽きません。
 登熟状況と刈り取りの適期を確認するために西ベンガルへ。今度は山形の米づくりには一言居士のアスクの技術顧問が同行です。4月2日、田植え長靴をスーツケースに突っ込み山形を出発、アドバイザーは3度目の渡印、すっかり慣れたものです。
 喧噪のKOLKATAに到着し休む間もなく現地へ。KOLKATAから西北150kmほどのBARDHAMAN県Bhatarの広大は水田地帯、稲の緑がまるで海の水平線のように広がっています。庄内平野、小さい、小さい。太陽は容赦なく照りつけます。
 炎天下、田植え長靴に履き替え、スケールを持って田んぼへ。成育と登熟の調査。物珍しいのでしょう、どこからともなく子供たちはおろか大人までが集まってきます。”田んぼでいったい何をしている??”。
 調査した概況は次の通りでした(写真の出来が悪くすみません)。
 DSC_0310.JPG DSC_0384.JPG
水田が海のように広がる           田んぼに入り成育を調査
①成育は傾穂期~乳熟期にあるが、株間のバラツキが大きく遅れ穂が目立つ。
②株は柔らかく稈は細い。
③A品種は稈長60cm、穂数300本/㎡、B品種は稈長55cm、穂数250本/㎡ほど。山形で栽培するより稈長はA品種が10cm、Bが20cm短く、穂数はともに50%少ない(穂数減は予想されていたため、植付株数を増やすようお願いしていましたが実行されなかった?)。
④穂のモミ数のバラツキも大きい。DSC_0368.JPG
⑤全体に紋枯れ病が発生している。また株の下葉には赤枯れ症状が顕著に見られた。下葉の赤枯れ症状の原因は不明
であるが、稲作が始まって以来、ワラが田んぼに還元されないために微量要素が欠乏しているのでないか?とも考えられる。
⑥地下水が豊富なためか水管理は良く行われている。また、防鳥対策としてテグス糸を張っている。
⑦いろいろの障害は目につくものの、収量はモミで2.5~3トン/haは見込まれるのでないか、と皮算用。
 イネ刈りは気温が高いことから出穂後30日目頃と見込まれ、4月15~20日に行うこと、刈り遅れは品質・食味を低下させることから適期を厳守するようお願いし、子供たちに見送られながら村を去りました。暑かった。
DSC_0331.JPG DSC_0315.JPG
灌漑水路で水浴びする子供たち     積載量違反?村人総出で稲ワラの運搬
DSC_0414.JPG DSC_0365.JPG
子供も大人も実に人懐っこい



 

2015年5月19日 11:24