インド西ベンガルのあぜ道から(5)

 1月20日に草丈が短かい3葉ほどの苗を植えた日本稲、その後の成育が気になります。”百聞は一見にしかず、Seeing is believing”。プロジェクトRは2月27日再び西ベンガルへと飛びました。
15563.jpg 15565.jpg
NADIA県Ranaghatの農業試験場で育つ日本稲7品種(後の建物が試験場)

 NADIA県Ranaghatの農業試験場の成育状況を30℃以上もの暑さと雨の中で調査したアドバイザーからの現地報告によれば
①各品種とも10葉程、幼穂が確認され、出穂前20~25日の幼穂形成期を迎えていた。
②A品種の試験区のうち、栽植密度15×15cm(44株/㎡)区と苗代日数25日苗区の成育が、他より勝っていた。施肥量の違いによる成育差は明瞭でなかった。
③日本稲の成育は、周辺の改良多収型インド稲と比較しても見劣りしない。
このことから、農業試験場の緻密な試験設計と周到な管理の下では成育は良好であり、満足のゆく収量が期待されると思われた。まずは一安心。
15509.jpg 15539.jpg
BARDHAMAN県Bhatarの現地農家、田んぼには井戸水が勢いよく注がれている
15505.jpg15557.jpg 15501.jpg
成育調査するプロジェクトR 幼穂を確認 珍しそうに集まった子供たち

 次に向かったのがBARDHAMAN県Bhatarの現地、田んぼには井戸水が勢いよく注がれ、青々とした稲田がどこまでも広がっていました。日本稲の成育概況は
①栽植密度15×15cm(44株/㎡)で田植えをするよう要望していたが、田んぼに入って調査すると、株数はムラがあるが平均的には20株ほど。施肥量も要望した量よりは少ないようである。
②A品種の成育は草丈50cm、茎数270本/㎡、葉数9枚目。
③品種Bは耕土が浅く、高低差が大きい田んぼに植えられたためか、成育は6品種の中で最も劣る。また、雑草(ヒエ、カヤツリ草)が目立った。
④幼穂は東北、北陸、九州の品種にかかわらず一様に確認できた。1426651528217.jpg
⑤幼穂の大きさから推定し出穂期は3月15~20日、刈り取りは高気温のもとでは出穂後30日程と見て4月20日頃。
⑥収量は、全品種の平均で3.0~3.5トン/ha(もみ)が見込まれる。
以上、農家の田んぼで栽培した収量は見込みで取らぬ狸の皮算用ですが、雨季に農業試験場で試験した結果の1トンよりも明らかに高いことがわかりました。
 なお、現地での水管理は出穂後は直ちに落水するのが慣行とか。これはコストが高い電気揚水のためです。高品質・良食味米の生産には、①出穂後も間断灌水が必要なこと、②周囲のインド稲より出穂が早いことから鳥害防止のため糸を張ること、③穂が出そろったら、葉枯れを防ぐため追肥をすることなどを要望しました。
 帰国後、送らtれてきた写真は追肥をする農家、その脇には糸が張られていました。恐らく農家にとっては、出穂後も水をかけるとか、鳥よけの糸を張るとかは初めてでしょう。アヒルが穂を食いちぎるので畦畔に網を張ることはある、とは言っていましたが。  
 

2015年5月13日 09:56