夏本番、穂に穂が咲く

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  夏本番、アスク試験田は出穂盛り(7月29日)



 山形県内はきのう(7月28日)梅雨が明け、夏本番が到来しました。今日は朝から真夏の太陽が照りつけています。でも、一歩田んぼに出ると、時折涼風が吹きぬけ、穂が涼しげに風に揺らいでいます。アスク試験田の夏ならではの風景です。
 さて、この暑さを待ちきれないように、試験田の酒造好適米品種「羽州誉」・「龍の落とし子」などの早生品種は穂が出そろいました。出穂した一本の穂には90粒ほどの花(頴花:えいか)がびっしりと着いています。この花が受精してもみ(米)になるのです。ほとんど注目されることもないイネの花、その構造と開花の仕組みを紹介しましょう。
 イネの花は2枚の緑色の頴で包まれています。頴は後に硬く黄色になって”モミがら”となるものです。中の雌しべと雄しべなどの花器を保護しています。頴の中には、その基部に鱗被(りんぴ)という二つのふくらみがあります。開花のときになると鱗被が急にふくれ、閉じていた二枚の頴が45°ほど開きます。これがイネの開花です(写真右)。鱗被の上には6本の雄しべがあり、頴が開き始めるとともに雄しべの花糸が急に伸びて、葯(やく)を頴の外に出します。葯の中にはたくさんの花粉が詰まっていて、葯の壁が破れると頴の外に飛び出します。
 雄しべに囲まtれて一本の雌しべがあります。雌しべの先は二股に分かれて広がり、その先の柱頭(ちゅうとう)と呼ばれる部分には、毛がたくさんはえています。これは花粉がうまくくっつくように仕組まれた自然の巧みな造形なのです。
 イネは出穂すると、すぐその日に上部の花から次々に開花を始めますが、不思議なことに、開花は必ず午前9時ころから始まり、正午を過ぎるともう開花しません。ひとつの花が開花している時間は1~2時間です。開花寸前に花粉は自分の花の雌しべに着くので、いわゆる自家受粉です。空中に散る無数の花粉は、配偶の目的を果たさないまま数十分後には生命を失ってしまいます。頴は再びピッタリ閉じ、もう開くことはありません。
 ギラギラ照りつける太陽の下で、午前中のわずかな時間、小さなイネの花が田んぼ一面に咲き、黄色い花粉が飛び散る様は、地味なイネの一生の中でもっとも華やかな一瞬、なのかもしれません。
 

kaki nadono

2014年7月29日 10:45