濡れぬ先の傘、作溝・中干し作業始まる

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アスク試験田と種子田の作溝をする平吹正直さんP1020394.JPG

 6月30日現在のアスク試験田の成育状況で、茎数が平年を上回ったことを紹介しました。ところで、米づくりにとって、茎の数が多過ぎるのは”青田ほめ”と揶揄されるように、好ましいことではありません。目標とする収量や品質にふさわしい茎の数があります。
 葉の数が9枚目に達するちょうど今、イネは穂を着ける茎(有効茎という)と、穂を着けない茎(無効茎という)の分かれ目を迎えます。7月に入ってから出現する茎の殆どは無効茎になると言ってよいでしょう。このため、この無効茎を抑え、有効茎歩合(総茎数に対する有効茎の割合)を高めるのが米づくりのポイントの一つになります。
 一方、湛水した田んぼは気温の上昇とともに、根の周りにガスが発生するようになります。田んぼに入ると、足元からブツブツとガスの泡が出ることがわかります。ガスの発生は根の成長を妨げます。
 そこで、無効茎を抑え、根の健全な成育を促すため、田んぼの数か所に溝を掘る「作溝」を行います。その後は、田んぼには水を入れず、小ヒビが入るぐらいまでおおよそ10日間ほど乾かします。稲の葉は黄色味を帯び硬くなり、根は下の方に深く伸びます。そして、再び田んぼに水が入るころ、茎の元には幼穂が生まれてくるのです。
 作溝・中干しはイネの成育を健全にするだけではありません。稲刈り時にも効果を発揮します。イネ刈り機械コンバインは乾いた田んぼでは効率が上がります。刈り取りの間近に降り続く秋雨に、作溝・中干し作業を省いた田んぼは排水がわるいためにぬかるみ、イネは倒伏、こうなると大型コンバインといえどもお手上げです。こうした場面を幾度も目にしてきました。
 梅雨時、晴れてても突然の雨に備えて傘を持って出かける、作溝・中干しは、これから2か月半後のイネ刈りに備えた「濡れぬ先の傘」ともいえるでしょう。
 

2014年7月 1日 12:18