アスク試験田のデータをまとめる(2)

  P1000669.JPG     雪が消え、霜柱が立つ山形市郊外の田んぼから真冬の月山を眺望(1月30日)

 いつもの年なら雪原と化している山形市郊外の田んぼから撮る真冬の月山ですが、いま、田んぼの雪はすっかり消え、霜柱が立っていました。アスク試験田のデータをまとめる(2)では、酒米の玄米を選別するふるい目の大きさを取り上げます。

ふるい目別重量歩合.jpgふるい目品種別.jpg

 2 「出羽燦々」のグレードアップへの提案 
 いま、兵庫県産の酒造好適米「山田錦」、人気が高まっています、その一つの要因が、「山田錦」のさらなる高品質化をねらって、玄米選別のふるい目を2.0mmから2.05mmに広げる「グレードアップ兵庫県産山田錦」運動の展開です。また、岡山産「雄町」は2.1mmで選別されています。著名な酒造好適米品種と産地では、より広いふるい目による選別へと移りつつあります。こうした動きに対し、山形県の酒造好適米の主要品種「出羽燦々」は、従来から2.0mm選別が基準となっています。
 さて、試験田のこれまでの調査によれば、「出羽燦々」を2.1mmのふるい目で選別すると、2.0mmより平均して、千粒重は0.5g、心白率2%高まり、玄米タンパク質含有率は0.2%低下しています。酒造好適米としての特性はいずれも向上しています。こデータを見る限り、2.1mm選別で、これまでの一等米づくりから特等米づくりへとグレードアップが図られるのでないか、と考えられます。ただし問題は、2.0mm選別より減収することです。
 上の棒グラフは、「出羽燦々」と「美山錦」を2.0mmと2.1mmのふるい目で選別した時の粗玄米重に対する重量歩合を表しています。これによれば、「出羽燦々」は9年間を平均して2.0mmでは94%、2.1mmでは89%です。2.1mmで選別すると2.0mmよりは5%は減収することを示しています。                    
 これを品種別、年次別にさらに詳細に表したのが折れ線グラフです。折れ線は、品種によって、また、栽培年によって大きく変動しています。とくに「美山錦」、「龍の落とし子」は2.1mm選別による減収率が大きく、年次間変動も大きいことがわかります。減収率の大きいのはいずれも猛暑の年です。
 これらの品種に対し、「出羽燦々」(グラフ赤色)の減収率はいずれの年次でも最も小さく、また、年次間変動も小さく安定していることを示しています。「出羽燦々」は2.1mmで選別して減収率10%のとき(23年の猛暑による小粒化)もありましたが、それ以外では3~5%の範囲に収まっています。仮に、2.0mm選別で570kg/10アールの収量とすれば、2.1mm選別では20~30kg減収することになります。この減収分は、品質のグレードアップで差別化することで補償できるのでないか、と考えますが。    
 もちろんここで提示したデータは、小規模な試験田から得られたものです。実際場面にも当てはまるのかの検討はこれからです。また、2.1mmのふるい目で品質は単純に向上するものでもありません。粒を大きくするために適正なモミ数を確保する、粒厚を高めるため登熟後期の凋落を防止する、そのための施肥法をどうするか、などなどの栽培方法の改善とが組み合わさって、グレードアップが図られると考えます。


 

2014年1月30日 11:00