アスク試験田のデータをまとめる(1)

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 試験田の春を待つ「米の山形酒の国」(1月23日)           葉色を計る
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 大寒が過ぎ、アスク試験田に差す日脚は一足早く春に向かって歩み始めています。本ブログでたびたび紹介している試験田は平成17年に開設されました。試験田は、酒造好適米品種の種子生産の場であるとともにデータを産出し「この指とまれ」などの酒米生産者へ情報を提供する場でもあります。シーズンオフのいま、これらデータのとりまとめの最中ですが、その中には酒米づくりに有用な知見が得られています。少々専門的になりますが2,3点を逐次紹介しましょう。

 1 「酒未来」の穂揃期の葉色から玄米タンパク質含有率を推定する
 酒造好適米品種としての優れた特性の一つが玄米タンパク質含有率が低いことです。タンパクが低いと発酵中に生成するアミノ酸の上昇を抑え、良い酒質になるからです。アスクでは品質調査室に近赤外分光計を設置、冬期間は酒米の里金山町や全国の産地から送られてくる酒米のタンパク分析に追われます。それらのデータは、生産者の手元に届け、産地の品質向上に役立てています。
 一方、米のタンパクはごはんのおいしさをも左右します。このことから、良食味米品種「はえぬき」や「つや姫」のタンパクの多少を”田んぼの中で早期に、しかも簡易に推定しょう”、との目的で山形県農業総合研究センターは、穂揃期(はえぬき:8月10日頃)の葉色からタンパク質含有率を推定する関係図を作成しました。
 この手法は酒米でもデータさえあれば応用できる、そこで試験田やこの指とまれグループの田んぼで計測した葉色(ミノルター葉色計による止葉の計測)と玄米タンパク質含有率とのデータを整理してみました。計測値のデータが多かった酒造好適米品種「酒未来」についてその関係を見たのが上の図です。
 図から、両者には高い相関関係(r=0.92)があることがわかります。また、回帰式の計算からは、穂揃期の葉色が35ではタンパク質含有率は7%になることもわかります。逆算すれば、酒未来の玄米タンパク質含有率を7%にするには、葉色は35に確保することを示しています。
 さらに一歩進め、それでは穂揃期の葉色を35にコントロールするには、葉色に強く影響する穂肥(7月10日頃の追肥)の量や施用時期をどうするか、まで遡ります。それには①気象経過、②田んぼの土壌の特性、③品種の特性などなど、複雑な要因がからむ中から最適な穂肥量を処方しなければなりません。あたかも医者が患者の病気を診断・予測し薬を処方するように。
 作成した一枚の図は、酒未来を作付する生産者にとって、”経験と勘”の酒米づくりから、”データに基づいた”酒米づくりへの一歩前進になるでしょう。本年もまた暑い中、葉色計を片手に田んぼを歩き回ります。より精度を高めるために。

2014年1月23日 10:02