酒造好適米品種の誕生をめざす(5)

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 生検2を試験した金山町上台           生検2(左)、右(出羽燦々)の成育(7月3日)

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 年の瀬も押し迫り、今年も残すところ5日、何かと気忙しいこの頃です。P1000606.JPG
さて、幻の酒米とも呼ばれている「愛山」、きれいな心白と、十四代の原料米「龍の落とし子」の早生の特性を併せ持つ新品種の誕生をめざし、アスク試験田で平成18年から取り組んできました。本年でF8世代になります。形態、品質などの実用的な特性は固定しました。仮の名を「生検2」と名付けています。ところが、ここ数年の猛暑で早生生検2が本来持っているであろう収量性や品質などの特性が今一つはっきりしません。
 そこで生検2は平場よりは中山間地や山間地に向くのではないか、そんな思いから酒米の里金山町で育て、その特性を調べました。その結果を美山錦と比較したのが上の一覧表です。
 表から、生検2の優れた特性、その一点は収量性が高いこと、2点は千粒重が大きいこと、3点は心白率が高いこと、そして4点はタンパク質含有率がやや低いことにあります。いずれも酒造好適米としての条件を満たしていると言えるでしょう。
 半面、心白の入りが大きく、腹側に流れる粒が多いため、玄米の外観は白っぽく見えること、稈が柔らかく枯れ上がりし丈(稈長)は短いのに倒れやすいこと、耐冷性(冷害抵抗性)、耐いもち病は弱いことがわかりました。これらの特性は、金山で試験して初めて明らかになったのです。
 以上の結果から、もし、生検2を金山町で作付するとすれば、生産者は倒伏に弱い、冷害に弱い点を気にするでしょう。大粒・心白・タンパクの酒造好適米の3特性を満たしているとしても。
 両親の優れた特性のみを取り入れた”いいとこどり”を狙って8年間、一発勝負で新品種の誕生をめざし育成を進めてきましたが、子育てと同じでなかなか思うようにはならないものです。ただ、酒を造ってみると生検2は思いがけない醸造特性を発揮するかもしれません。それを楽しみに挑戦はまだまだ続きます。 
 

                                                     

2013年12月26日 11:12