「つや姫」、そのおいしさを解き明かす

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図1(左) 「つや姫」の構造、図2(右)「コシヒカリ」の構造(山形県農業総合研究センター・茨城大農学部)
「つやつや輝くご飯の白さ」、「これまで食べたことがないしっかりとした食感」、「さすが米どころの味」などなど。昨年の暮れ、日ごろお世話になっている知人達に贈った「つや姫」への礼状には、美味しさを称える言葉が認められていました。
「つや姫」のおいしさの秘密、それはどこに潜んでいるのでしょうか。一般に、コメのおいしさは、タンパク質、アミロース、マグネシウムなどの化学成分と関係が深いとされ、本ブログでもたびたびデータで示し紹介しています。
ところが「つや姫」のおいしさは、これら成分の含有量のみでは説明しきれない、秘密のベールに包まれていたのです。そのベールは今、一枚一枚はがされ、おいしさの秘密が解き明かされたのです。
解き明かしたのが、①分光測色計による「ごはんの白さの評価」、②電子顕微鏡による「ごはんの表面構造の解明」、③テンシプレッサーによる「ごはんの硬さ・粘りの測定」、④味覚センサーによる「ごはんの味の評価」、そして⑤質量分析計による「ごはんのメタボローム解析」、というハイテク機器を駆使した研究です(山形県農業総合研究センター資料:平成24年12月)。
ここでは、秘密のベールの一枚、
電子顕微鏡で覗いた「ごはんの表面構造」を紹介しましょう。以下は山形県農業総合研究センターと茨城大農学部の研究結果を引用しました。
「炊飯米の表面構造は、つや姫、コシヒカリとも糊の糸がよく分散した細繊維状構造が認められる。細繊維状構造は炊飯米の粘りと関係が高いとされ、粘りが強い両品種の特徴がよく出ている。細繊維状構造の直下には、発達した海綿状構造がある。その厚みを比較するとコシヒカリが約20μm(マイクロメートル:1マイクロメートルは0.001mm)であるのに対し、つや姫は約40μmと2倍の厚さとなっている。海綿状構造の厚さは、炊飯米の柔らかさ、や弾力性に関連することから、柔らかく弾力性に富むつや姫の食感につながっていると推察される。
つや姫の食味特性である粘りと硬さ・柔らかさの絶妙なバランスは、表層の細繊維状構造と表層内部の海綿状構造がよく発達していることによることがうかがわれる」。
茶碗にふっくらと盛られた「つや姫」、その一粒一粒をハイテクの機器で覗くと、そこにはおいしさの秘密の一端が広がっていることに驚かされます。 「つや姫」のおいしさ、それは天性の優れた特性と言えるでしょう。その天性を埋もれさすことなく、さらに磨きをかけ全国一のブランド米に育てる秘密、それは、機器で測ることはできない4500人の「つや姫認定生産者」の心にあるのではないでしょうか。もちろん、「つや姫」を扱う私達にも。



 

2013年1月17日 09:56