酒米づくりへの高温対策

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                             アスク試験田は雪景色(12月10日)

山形県内は、9日から本格的な降雪になり、大蔵村肘折の120cmを筆頭に、各地で今季一番の積雪を記録しています。いよいよ冬本番を迎えました。 今年のような大雪にならなければよいのですが。  さて、本年産の酒米品質は調査中ですが、その中から、穂肥を2回施した事例を紹介しましょう。酒造好適米の品質は、”大粒”、”心白がきれいに入る”、”タンパク質含有率が低い”の3拍子そろっていることです。これらの形質のうち、大粒・心白は、出穂前後の気温や日照時間の気象条件に大きく影響されます。一般に、出穂後20日間の日中と夜間の気温較差が大きく、多照の条件では、米粒は大きくなり、きれいな心白粒になると言われています。また、粒が大きくなることでタンパク質含有率は低下します。
ところで、ここ数年の夏の暑さ、とりわけ9月に入ってからの残暑の厳しさには閉口しますが、稲とて同様です。暑さで体力が消耗し、品質の低下や小粒化の要因となっています。とくに酒米は粒が大きいだけに品質は低下しやすいようです。もし、9月の残暑が今後恒常的に続くものとすれば、品質を低下させない手だてが必要です。
そこで、この指とまれグループの平吹・山口の両君が暑さ対策として穂肥を2回施用することを試みることにしたのです。山形県の酒米づくりでは、通常、7月15日頃肥料を施用することで、稲は元気になり、夏の暑さを乗り越えます。これを穂肥と呼び、米づくりにとって最も大切な肥培管理になっています。ただし、穂肥2回以上は、米のタンパク質含有率を高めるため禁じ手となっています。
それでは両君が出穂前20日と10日に30アールの田んぼで試験した2回穂肥の効果はどうだったでしょうか。下の表にみられるように、酒未来では収量面にプラスしたようですが、品質面では1回区との違いはなく、また、タンパク質含有率が高くなるということもみられないようです。一方、羽州誉では収量・品質面とも1回と2回の違いは明瞭ではありませんでした。本年のようなあの暑さでは、2回施用の効果がもっと高く表れるのでないか、とひそかに期待していたのですが。
以上の穂肥対応は急遽実施したということもあり、データの取り方も不備でしたので、次年度さらに検討することにしています。いずれにしても、今後とも、出穂後に暑さが続くものとすれば、酒米づくりも、高温対策を考えなければなりません。これまで、禁じ手と言われてきた穂肥2回も、その効果は高いかもしれません。
来年、両君に再挑戦していただきましょう。

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2012年12月10日 11:29