葉の色から見る酒米づくりへの夢

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白一色になった月山(11月22日、山形市郊外にて)

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今日(11月22日)は二十四節気のひとつ小雪、言い得て妙、山形市はきのう初雪を観測しました。平年より3日、昨年より5日遅いとのことですが、季節は確実に冬本番に向かっているようです。
さて、本ブログでたびたび取り上げているアスク試験田、今、試験田から得られた調査データのとりまとめの最中ですが、その中から、夢のあるデータを紹介しましょう。
夢ですから話は大きくなりますが、衛星から成育中の酒造好適米品種の米粒タンパク質含有率をとらえようというものです。その根拠、それはイネの葉色の濃淡は、稲体中に含まれる窒素量、延いては、米粒のタンパクの多少と深く関係しているからです。とくに、穂が出て3~4日の穂揃期の葉色と米粒のタンパク質含有率は関係が深いと言われています。
このため、ごはんのおいしさを競い合っている良質米品種では、それぞれの品種ごとに、葉緑素計(SPAD)で葉色を測定し、栽培管理に活用されています。今では、良質米生産にとって、葉色の測定は欠くことのできないものになっています。例えば「つや姫」、玄米タンパク質含有率7%以下にするには、出穂30~25日前の葉色は36~37、穂揃期は33が適正値とされています。生産者は、これらの葉色を指標とし、穂肥の判定をしています。

酒米ではどうでしょうか。残念ながら、葉緑素計による葉色の測定データは少なく追肥などの栽培管理に提示するまでに至っていません。でも、その拠りどころになるデータがここにあります。アスク試験田で平成23、24年に調査した、穂揃期の葉色値と玄米タンパク質含有率との関係です。

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上の図からは、酒造好適米品種のいずれも、穂揃期に葉色が濃い年次は、玄米タンパク質含有率が高いことがわかります。それを、品種の熟期別に平均した表でみると一層はっきりします。本表から、穂揃期の葉色が40では、玄米タンパク質含有率は7.5%以上、逆に、タンパク質含有率を7%以下にするには、葉色は34前後と推定されます。
以上の結果は、アスク試験田という小規模で、それも2か年という限られたデータから得られたものです。気象・土壌条件を異にする金山町などの酒米の大産地でも同様な関係がみられるかどうかは不明です。
もし、酒米産地においても、穂揃期の葉色から玄米タンパク質含有率が精度よく推定できるのなら、夢物語は現実になるかもしれません。衛星画像から送られてくる田んぼ一枚一枚のタンパク含有率のデータとタンパクマップの作成、これに基づいて均一なタンパク質含有率の酒米を生産するための対策や改善策などなどが生まれるでしょう。産地と蔵元からともに喜ばれ、信頼される酒米産地への飛躍、たった一枚の図から、そんな夢を追い求めています。

 

 

2012年11月22日 14:33