"清川ダシ"は悪風か?

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最上川は峡谷から一気に庄内平野へと流れる(清川にて)

山形県の母なる川”最上川”が、最上峡谷から一気に庄内平野へと抜け出る庄内町清川、強い東風が吹走する”清川ダシ”でその名が知られています。蛇足ながら、清川は幕末の志士”清河八郎”の出身地でもあります。また、庄内平野に吹く風を、歌手水森かおりは”風が泣いてる鳥海山”、”風が呼んでる出羽三山”、”風が燃えてる庄内平野”、と「庄内平野風の中」で切々と歌い上げています。
東北地方には、山地・山脈 の低いところを越す東風をダシといい、その場所の名を付けて呼んでいる例が多いようです。秋田民謡生保内節で宝風と謡われる生保内東風(おぼねダシ)もそのひとつです。中でも、日本三大悪風の一つと悪風呼ばわりされている”清川ダシ”は有名です。

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清川ダシは、オホーツク海高気圧が発達し、梅雨型の気圧配置のときに起こりやすく、最上川峡谷に沿って、強い風が庄内平野へと吹き出します。この気圧配置の上に、日本海に低気圧があって、風を吸い込む力があるときは、ダシ風は一層強くなります。
清川ダシはなぜ悪風と呼ばれるのでしょうか。清川ダシと米の作柄との関係を調査した結果があります(山形県農業試験場研究報告)。
それによれば、風の吹き出し口に近い立川町(現庄内町)の6月のダシ風の出現率と米の作況指数との間には、0.85という高い正の相関が認められました。6月はイネの分げつ盛期に相当し、この頃のダシ風は根の伸長・発達を促し、草丈を抑制し、地上部を強剛にすると述べています。イネの成育にはむしろプラスの効果があると言うのです。
その一方で、9月の強いダシ風(5m/s以上)の出現率と作況指数の関係では、-0.72の負の相関が認められました。9月は稔りの最盛期から刈取り期に相当することから、この時期の強い風は稲体内の水分を不足させて粒の肥大を阻害し、収量低下を起こすと考察しています。事実、平成23年の9月初めに吹いた強いダシ風は、フエーン現象と重なって、茶米の発生による品質低下や小粒化による収量低下を起こしました。


 

 

このように、清川ダシが庄内地方の作柄にDSCN4203.JPG

える影響は功罪半ばし、一方的に悪風と呼ばれる謂われはないことがわかります。

そして今、清川ダシは再生可能エネルギーとして注目されています。庄内町にはすでに11基もの風車が回り、電気を生み出しています。
”清川ダシ”は、米づくりに時には悪さをすることはあっても、自然の恵みである無限のエネルギー源としての宝風、最上川を渡るダシ風に涼風を感じた庄内平野のあぜ道でした。 

 

 

 

 

 

 

 

2012年7月17日 11:49