酒米タンパク測定の効率・精度アップをめざす

 

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アスクが導入予定している近赤外分析計(ビーエルテック社製)

アスクでは、酒米のタンパク測定の効率化と精度向上をめざして、最新式の近赤外分析計の導入を予定しています。
米の成分であるタンパクやアミロースなど、食品分野の成分分析には、近赤外分光法が広く用いられています。この手法は、波長800~2500nmのいわゆる近赤外線領域の光を測定対象に照射し、その反射や透過の度合いから、タンパク質などの特定成分の量を、非破壊的に簡易・迅速に測定するという利点を持っています。
米のおいしさを測る「食味計」はその代表的な機器です。コシヒカリやつや姫を食味計にかけると、タンパク質やアミロースの含有量とともに、これらの成分量から推定した食味スコアが出力されます。現在、こうした食味計は広く普及し、米の食味向上に大きく貢献しています。もちろん、アスクにも食味計が設置され、フルに活用されています。
ところで、、同じ「うるち米」ですが、酒米を食味計にかけてタンパク質の含有量を測定しようとしても、誤差が大きく表れます。酒造好適米品種はコシヒカリなどの品種とは玄米の特性が大きく異り、粒が大きく、心白歩合が高いという特性を持っています。このことが、誤差を大きくしているのでないかと考えられます。このため酒米のタンパク質を簡易に測定するには、酒米専用の手法を近赤外分析計に組み込まなければなりません。
アスクが導入を予定している機器はビーエルテック社の「インフォスター」です。本器を導入するにあたって、23年産の「出羽燦々」・「山田錦」などのサンプル61点のタンパク質含有量を手分析で求めました(玄米の窒素%×5.95)。得られたタンパク質含有量のデータの範囲は6.5~9.1%でした。このサンプルに基づいて検量線と呼ばれるものを作成、その結果、手分析して求めた実測値と検量線から求めた値(NIR値)との相関係数はR=0.994という高い値が得られました(下図のグラフ)。
ただし、例えば、24年産米のタンパク質含有量も下のグラフの回帰直線で推定できるのか?、心白歩合の高い「出羽の里」、心白歩合の低い「美山錦」など、品種特有の玄米特性をもつ酒米にもあてはまるのか?今後、多様なデータを積み重ねながら精度を高めていく必要があります。
酒米のタンパクを測定することで、生産された米のおおよその栽培履歴がわかります。穂肥が多ったか少なかったか、施用時期が早かったか遅かったか?、土壌型は?などなどです。
機器の導入によって、蔵元、酒米生産者には測定結果をこれまで以上に迅速にお知らせできます。また、データの蓄積・解析等によって、産地の品質向上のための栽培処方箋を作ることもできるでしょう。酒米のより一層の品質向上が期待されます。


DSCN4142.JPG近赤外分光計による測定1.jpg
測定値の出力               実測値とNIR値との関係



 

 

2012年6月15日 09:34