アスク試験田の成育状況(7月10日)

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  山形は7月に入り、昨年の猛暑を思い起こさせるような暑い日が続いています。梅雨明けは7月11日、平年より14日も早いとのことです。
 この暑さによって、アスク試験田の成育は、草丈は長く、茎数は少ないという状況です。また、葉色は薄くなってきました。中生品種の山酒4号(玉苗)・酒未来の幼穂は5mmほどに成長しています。
 さて、イネは10葉期頃になると、葉の色はそれまでの濃い緑から、やや黄色みを帯びてきます。これは、葉や茎を盛んに増やしてきた成育で、土の中の肥料分が切れてきたこと、また、株元には幼穂が生まれ、育ってきたためです。
 そこで、葉や茎が緑を取り戻し元気に育つよう、幼穂に着生しているもみが退化せずに大きく育つよう、窒素肥料を追肥します。穂肥と呼ばれています。
 穂肥は、適切に施用すると、分化したもみの退化を防ぐ、もみがらを大きくする、稔りを高めるなどの効果があります。いわば、収量・品質・食味を向上させる切り札です。反面、もろ刃の剣で、肥料の量が多すぎたり、時期が遅れたりすると、コメのタンパク含量を高め、食味を低下させます。倒伏の原因ともなります。
 穂肥の施用時期や量は、10葉期頃(7月10日)DSCN1712.JPG
の草丈、茎数、葉色、幼穂の成長度合い、そして
予想される気象などなどを勘案して決定されます
。穂肥は、コメづくり農家の腕の見せどころ、とい
って過言ではありません。
 たとえて言えば、お医者さんが患者さんの容体
を診察し、薬などを処方するのとおなじです。です
から、穂肥を施用する前にイネを観察することを
生育診断とも呼んでいます。
 このように穂肥の施用は、コメづくり農家にとっては重要な技術であることから、農家のグループがお互いの田んぼを見て回りながら、助言しあって決めている事例もあります。7月12日、酒造好適米「出羽燦々」を生産するJA新庄・もがみの「指きりげんまん」のグループ13名が圃場巡回を行いました。グループの大部分の田んぼは葉色が40~43と濃いこと、幼穂が確認されないことから、穂肥は中干し後の7月17~20日に窒素成分で1.5kg/10a施用することを申し合わせました。
 ところで、コメづくりにとって大切な穂肥、この技術は今では全国的に実施されていますが、穂肥の発祥の地が山形であることは意外と知られていないようです。穂肥の普及に尽力した田中正助翁の功績を讃え、山形市江俣の中央公園に、「水稲分施発祥の地」の碑が建っていることも。DSCN1697.JPG
 碑
には「・・・・昭和8年この試験田で、田中正助翁が水稲分施技術(穂肥)を確立したことによってその成果が広く知れ渡り視察者は後を絶たなかった。・・・・・戦後の食糧不足のなか分施技術は近代稲作技術との脚光を浴び全国に普及された・・・・」と。
 山形県稲作の単収が全国のトップまで押し上げた技術、それは保温折衷苗代による健苗の育成と穂肥の組み合わせであったといわれています。
 かって、先人達が米づくりに汗し、穂肥技術を生み育てた田んぼ、その田んぼ今では子供たちが歓声をあげながら遊ぶ公園や宅地となり、昔日の面影はない。

 
 
 

2011年7月13日 12:08