山々の新緑、水鏡に映える

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       「椹平の棚田」(山形県朝日町)

 例年より遅れていた田植は終わり、水をいっぱい湛えた「朝日町椹平(くぬぎだいら)の棚田」には、山々の新緑が映えています。まるで鏡を敷きつめたように見える棚田の眺望はすばらしいの一言です。間もなく、苗が成長し、棚田は水鏡から、緑一面の風景へと変化するでしょう。水鏡の棚田は、短い間の風景です。
 でも、棚田はあくまでも米を生産する場なのです。きつい勾配の田んぼという厳しい条件の中にあって、たゆまぬ米づくりへの情熱が、この景観をも守ってきたに違いありません。
 椹平の棚田は、昭和の初め頃までは桑畑でした。戦中・戦後の食糧増産の声とともに、自力で等高線に沿った形の田んぼに整備され、扇を広げたような棚田風景が生まれたといわれています。DSCN1602.JPG
 ヒメサユリが群生する高台から眺める棚田、そこもまた、今、米づくりが抱える担い手の高齢化・耕作放棄地・転作による畑地化などなどと無縁ではありません。棚田の美しい原風景は、農家のみならず、地域住民の努力によっても守られているのです。
 秋にはまた黄金色に映える棚田風景を見たい、そんな思いを深くし、椹平を後にしました。

2011年6月 6日 11:17