冷害研究ここにありき(1)

 ”花の山形、紅葉の天童、雪を眺むる尾花沢”、花笠音頭で謡われる豪雪の地尾花沢、今、2mもの深い雪に覆われています。
 かって、この地にイネの冷害研究の試験地があって、長年にわたって研究が行われていたことを知る人は、地元でも少なくなりました。試験ほ場は住宅地に生まれ変わり、昔日の面影はありません。ただ、試験地の跡に、研究の功績を讃えた”冷害研究ここにありき”の記念碑がひっそりと佇んでいるだけです。
 昭和9年、未曽有の大冷害を機に、イネの冷害克服をめざす研究機関、尾花沢試験地が創設されました。それ以来、50年近くにわたって、冷害常習地という地の利を生かして、冷害に強い品種の開発や技術の創出に取り組み、山形県の米づくりに大きな役割を果たしてきました。
 しかし、米をめぐる情勢の大きな変化の波に抗するべくもなく、惜しまれながら試験地の幕を下したのが昭和57年でした。幸いなことに、研究の灯は消えることなく、山形県農業試験場庄内支場(当時)へと引き継がれました。
 今、深い雪に埋もれている碑、春を待ちながら、試験地が積み重ねてきた研究の一端が「はえぬき」へ、そして今脚光を浴びている「つや姫」の誕生へと役立ったのでないかと喜ぶ一方で、”冷害は忘れたころにやってくる”、このジンクスをも碑は訴えているのでないか、降りしきる雪の中、そう思えてなりませんでした。
尾花沢試験地.JPG     
DSCN1044.JPG
”冷害研究ここにありき”の碑     雪をかきわけ”冷害”のみを読み取る

DSCN1048.JPGDSCN1051.JPG                                  
 試験地跡は住宅地に  ちょっと足をのばして奥羽山系に抱かれ大正ロマン漂う、雪の銀山温泉へ
尾花沢品種.JPG
 尾花沢試験地で育成された品種、「さわにしき」は耐冷性品種、「でわみのり」は
多収品種、「さわのはな」は良食味品種として普及

2011年1月24日 11:45