幻の酒米「酒の華」

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   アスク試験田の大きな看板の脇で、”幻の酒米”とも呼ばれている「酒の華」が、一段と緑の濃さを増しながら育っています。今から85年も前に誕生した品種とは思えないほど元気です。
 「酒の華」は、山形県西田川郡京田村(現鶴岡市)の工藤吉郎兵衛翁によって育成された酒米三部作(酒の華・京の華・国の華)の一つです。
  
 翁は当時としては、農事試験場でもまだ着手しDSCN0607.JPG
なかった人工交配を手掛けるほどの進んだ民間育種家でした。大正9年に「亀白」に「京錦1号」を交配し、同14年に命名したのが「酒の華」です。酒米用として、昭和5年頃には197ha栽培されたとの記録があります。
 翁が情熱を燃やし育てた「酒の華」、その後どのような運命をたどったのかは定かではありません。おそらく、激しくなってきた戦争の足音の中で、その運命は火を見るより明らかであった、と思われます。

 さて、85数年前に誕生した「酒の華」は、どのような特性をもっていたのだろうか。翁が毛筆で記した「酒造米酒の華ノ来歴(昭和2年)」によれば、中生・無芒種で庄内地方一般品種と異なり心白米なりとあります( 洋:庄内における水稲民間育種の研究)。また、当時の山形県農事試験場が実施した酒造米用品種比較試験(昭和5~11年)の成績書によれば、出穂期8月9日、稈長104cm、無芒、?先色は黄白、心白歩合43%、玄米千粒重23g(試験年次の平均値)とあります。
                   

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  今春入手した「酒の華」の種子、この種子から育っているイネもまたこのような特性を持っているだろうか。否、幾星霜を経て、その姿は変わってきただろうか。
 もし、育っている500株の中に、異株が混入しているとすればそれらを除去し、出穂期・稈長・心白などで「酒の華」の特性を持っているだろうとみられる株のみを選抜し(2次選抜)、その株を増殖することで、85年前の「酒の華」を再び蘇らせたい。そんなロマンを持ちながら、うろうろあぜ道を歩きまわっています。




 
  

                                                                                                                                                             

2010年6月16日 13:07