美味しいお米の系譜

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 水稲の全国品種別収穫量(平成20年産)のベスト5をみてみましょう。1位が「コシヒカリ」、全国の収穫量のうち36.4%と、ダントツのシェアを占めています。以下、2位「ひとめぼれ」、3位「ヒノヒカリ」、以下、4位「あきたこまち」そして5位「はえぬき」となっています。
いずれの品種も、甲乙つけがたい美味しいお米との評価を得ています。そして気づくのが、これらの品種には「コシヒカリ」の血が強く入っているという共通点です。「ひとめぼれ」の両親はコシヒカリと初星、ヒノヒカリは愛知40号(黄金晴)とコシヒカリ、あきたこまちはコシヒカリと奥羽292号と、片親はコシヒカリです。「はえぬき」は庄内29号と秋田31号(あきたこまち)ですから、父方からコシヒカリの血が入っていることがわかります。

 このように、最近誕生している美味しいお米のほとんどが「コシヒカリ」の系譜といえるほど「コシヒカリ系」の米で占められています。
世間には、秀才の多くでる血筋とか、美人の家系というものが知られていますが、お米の品種についても、それをはっきりみることができます。
もちろん、「コシヒカリ」を母本にすれば、その子供の全てがすぐれた品種になるとは限りません。品種は美味しさだけでなく、その品種が栽培される土地の気象・風土に適して、病気に強いとか、冷害に強い、倒れにくい、などの特性をも備えていなければなりません。

 そこで、少々味は落ちていても、これらの特性を備えた品種が交配の母本に用い、それからできた多くの子供の中から何代にもわたって、おいしさと風土に適した特性を選びすぐって、品種は誕生するのです。
こうして育成された山形県の良食味品種「はえぬき」や「つや姫」は、丈が短く、成熟期に少々の風や雨に当たっても倒れません。農家は安心していられます。「コシヒカリ」が倒れやすいという特性を改良しているからです。

 蛇足ながら一言。「コシヒカリ」は東北地方以南が適地で「冷害」には弱いといわれてきました。しかし、宮城県古川試験場の研究により「コシヒカリ」は、わが国の品種の中では冷害にもっとも強いことがわかったのです。冷害常襲地の東北地方に、「コシヒカリ」の血を引く「ひとめぼれ」や「はえぬき」が誕生し、普及しているのも、この研究が生かされているからです。
しかし、倒れない、冷害に強いからと言って、肥料を多く施用したり、水管理に手抜きをしては、美味しさは失われてしまいます。美味しさには、品種の影響が最も強く働きますが、産地・気象・栽培方法、さらに収穫後の乾燥法、貯蔵法などによっても影響されるのです。

 このように、美味しいお米の生産は、品種が持っている才能に、農家の努力と天・地の恵みが加わって可能になるのです。「氏+育ち」です。